日本株揺らす内憂外患 内需株変調、消費に懸念(24年4月20日 日本経済新聞電子版)

 

記事(市場グループ次長 荻野卓也)

 

(1)要点

19日の日経平均株価は前日比1011円安の3万7068円と急落した。

要因

 1)中東情勢緊迫と

 2)半導体株安が主因だが、

 3)賃上げを起点とした好循環が期待された内需関連株がさえない。

根底には国内消費の減速懸念があり、業績の先行きに弱気な見方が広がる。

いわば「内憂外患」の様相で、調整が長引く恐れがある。

 

 

 

(2)「景気変動の影響を受けにくいはずの内需株が敬遠されている」

この日は朝方から売りが先行。

 1)前日の米ハイテク株安を受けて

 2)イラン領内の複数の場所で爆発があったとの報道

 3)東京エレクトロンやアドバンテストといった主力外需株が指数を押し下げ、

日経平均は約2カ月ぶりの安値をつけた。

 イスラエルとイランの対立が一層激化するなど、地政学リスクは近年になく高い。中国経済の低迷も長期化している。景気変動の影響を受けにくい内需株が脚光を浴びそうだが、逆に敬遠されている。

 

(3)「底流にあるのが、国内景気に対する不安感」

業種別日経平均株価の2023年末比の騰落率をみると、

下落率

 首位は11%安の「陸運」

 2位に「サービス」、

 3位に「鉄道・バス」と内需関連が上位を占めた。

底流にあるのが、国内景気に対する不安感だ。

「円安進行に伴う輸入物価の上昇が消費者の懐を直撃している」。

(ピクテ・ジャパンの松元浩運用本部シニア・フェロー)

 国内消費の息切れに懸念を示す。「原料高をいつまで価格転嫁できるのか」と身構える。

 

 

 

(4)(岡三証券の松本史雄チーフストラテジスト)

 円安はインバウンド(訪日外国人)拡大を通じて内需株のプラスにもなると指摘する。「影響は両面あるが、現在はコスト増による利益の下押し圧力がより意識されている」とみる。

 

(5)「証券アナリストの業績見通しにも内需株への弱気な見方が反映」

(大和証券)

予想の変化を指数にした「リビジョン・インデックス(RI)」を18日時点でまとめた。TOPIX1000(除く金融)の企業で24年度の業績見通しを対象に、

  A)海外売上高比率が30%以上のグローバル企業と

  B)10%未満の内需型企業

でRIを算出。

年初から3月までは内需企業はほぼプラス圏で、グローバル企業を引き離していたが、4月に入って急低下。足元もマイナス圏に沈む。

(大和の鈴木政博チーフクオンツアナリスト)

 「原料高を理由とした値上げは一巡した。適正なマージン(利幅)確保に向けた値上げは、全ての企業ができるわけではない」と慎重な予想が増えた背景を分析する。

 

(6)「「悪い円安」への警戒 152円超で消費下押し、157円超で実質賃金上昇が困難」

通常なら円安イコール株高だが、過度な円安でこの前提が揺らぐ。

(JPモルガン証券の西原里江チーフ株式ストラテジスト)

 「円安は152円を超えると消費への下押し圧力が、157円超なら実質賃金のプラス転換が困難と意識され、日本株のマイナスになる」とみる。米国の利下げ観測が日増しに後退するなか、こうしたシナリオの蓋然性も高まっている。

 

(7)政策保有株の削減など企業統治改革をはじめとした日本株の買い手掛かりに変わりはない。ただ、外需株と内需株の先行きがともに不透明感を増すなか、相場の本格的な反転にはしばらく時間を要しそうだ。

(市場グループ次長 荻野卓也)