メタ、生成AIを「無償開放」 開発加速へ外部ノウハウ オープンAIに対抗(24年4月20日 日本経済新聞電子版)

 

記事【シリコンバレー=渡辺直樹】

 

(1)米メタは18日、新型の生成AI(人工知能)を開発したと発表した。

外部に無償で開放する。「オープンソース」と呼ばれる手法で、外部の技術やノウハウを取り込み開発速度を速める狙いだ。生成AIで先行する米オープンAIに対抗する。(関連記事を社会1面に)

 

 

 

(2)「メタの生成AI「Llama(ラマ)3」」

メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は自社の短文投稿サービス「スレッズ」で最新のAI技術を外部に開放したことを強調した。

メタが18日に発表した生成AI「Llama(ラマ)3」

1)AIの学習データを従来の7倍に増やし、より複雑な回答ができるようにした。

2)最大の特徴はソフトの設計図となる開発コードを無償開放し、外部技術者が利用・改良できるオープンソースと呼ばれる開発方式をとったことだ。

 

(3)「オープン化を採用した製品・サービスで改良スピードが速まる」

代表例は1990年代の基本ソフト(OS)「リナックス」やグーグルのスマホ用ソフト「アンドロイド」だ。

対価を得ずに幅広い技術者が開発に加わることで改良のスピードが速まる。世界標準を握ることも可能になる。そのうえで自社のサービスに搭載して収益を拡大できる。

 

(4)「オープン化はメタの「Llama3」やマスク氏の「xAI」」

メタのAI研究は2013年から」

 2013年からAIの基礎研究を続けて技術を蓄積してきた。22年11月にChat(チャット)GPTを公開したオープンAIやグーグルに比べてネットサービスへの搭載では後手に回った。オープン化で巻き返す。

 米起業家のイーロン・マスク氏は、新会社のxAI(エックスエーアイ)を立ち上げた。開発した生成AIの技術をオープン化する方針を示した。

 画像の生成AIを開発する英スタビリティーAIなども一部のソフトを外部に開放した。

 

(5)「生成AIの規制」

生成AIを巡るテック企業の競争が激しくなるなか、消費者や知財の保護に向けた規制の議論も活発になっている。

1)欧州連合(EU)は議会がAIを包括的に規制する「AI法案」を可決した。

2)日本政府もAIに関わる企業を対象とした「AI事業者ガイドライン」の素案を公表した。世界でAIに規制をかける動きが広がる。

 

(6)「オープン化による改良ソフトが改変の責任問題」

生成AIはなりすまし詐欺やサイバー攻撃への転用、著作権の侵害、偽情報の拡散に悪用される課題を抱えている。オープン化によりソフトが改変されると、開発元と技術を改良した企業の間で責任の所在が曖昧になる懸念もある。