飲んで美容コスメ変貌 資生堂参入、カゴメ・ツムラと協業 「韓流」台頭で健康に活路(24年4月17日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)要点「美や健康に関連する栄養素をサプリなどで得る「インナーケア」事業に進出」

コスメ各社で、美や健康に関連する栄養素をサプリなどで得る「インナーケア」事業に進出する動きが広がっている。

化粧品市場は成長傾向だが、韓国からの輸入額が新型コロナウイルス禍前に比べて2.5倍になるなど国内勢の存在感が薄まる。

栄養まわりに知見のあるメーカーと協業するなど、業界を超えて成長が続くサプリ関連市場に活路を見いだす。

 

写真 資生堂はインナーケア事業を立ち上げると発表した

 

(2)資生堂の新ブランド「シセイドウ ビューティー ウエルネス」

食事など体の内部から美容効果を得る「インナーケア」の新ブランド「シセイドウ ビューティー ウエルネス」を立ち上げた。

販売したのはカゴメとコラボした飲料「ルーティナ」と、ツムラと連携したサプリ「チューンボーテ」。

ルーティナ

 カゴメの持つ野菜の研究知見を生かし、体内時計に着目した商品だ。

チューンボーテ

 ツムラの持つ漢方の技術もあわせ、体の調子を向上させるとしている。

研究から商品発売まですべてを他社と連携するのは資生堂にとって初めて。

魚谷雅彦会長最高経営責任者(CEO)が両社の社長に自ら声がけをしたことで実現した「肝煎り」の施策でもある。

 

(3)資生堂は2023年12月期、純利益が前年同期比でも36%減の217億円となるなど厳しい業績が続く。新型コロナ禍後の需要回復も期待されたが、売上高も9%減の9730億円となった。

立て直しのため、国内では全商品数を22年末から2割の削減を目指すなど構造改革を進めている。

 

中国展開も検討

 

(4)「国内の化粧品市場の成長は、海外メーカーの台頭による」

インナーケア事業はそんな中で打ち出した未来への種まきだ。

背景には国内の化粧品市場の競争環境が厳しくなっていることもある。

富士経済によると、国内市場は20年の2兆7559億円から23年には3兆276億円と10%増の見込み。国内大手各社が伸び悩む一方で市場が成長傾向にあるのは、海外メーカーの台頭がある。

 

(5)「韓国からの化粧品などの輸入額がフランスを抜いた」

(日本輸入化粧品協会(東京・港))

韓国からの化粧品(シャンプーなどを含む)の輸入額は22年に775億円と、約30年間トップだったフランスを抜いて初めて首位に。23年はさらに伸長して959億円と、新型コロナ禍前の19年(373億円)から2.5倍と急成長している。

K-POPや韓流ドラマ・映画の人気を追い風に、ファンデーションなどのベースメーク用品や化粧水などのスキンケア用品が人気を集める。

同協会専務理事の栗原悟氏によると、数年前まで購買層はZ世代が中心だったが、「30~40代にまで広がっている。一過性の人気ではなく、定着しつつある」と話す。

そこで資生堂などが目をつけたのが、健康意識の高まりで成長が続くインナーケア関連市場だ。

 

各社が競い進出

 

(6)同市場の代表格のサプリの市場規模は25年に1兆967億円と10年で2000億円以上増える見通し。訴求する機能や効能も千差万別で、他社との差異化がしやすく、化粧品各社が進出する動きが広がっている。

1)スキンケアブランド「DUO(デュオ)」を手がけるプレミアアンチエイジングは23年、ビタミンCを配合した「SINTO(シントー)」と、体脂肪対策をかかげる「X(エックス)」の2ブランドを相次いで立ち上げた。デュオの人気が一服し、この2ブランドで次の成長を探る。

 

2)男性向けコスメを手掛けるBULK HOMME(バルクオム、東京・港)も、睡眠の悩みがある人向けに就寝前に飲むプロテインを23年11月末から展開する。

同社の担当者は「販売状況を見て、外部サイトなどでの取り扱いも増やしたい」と話す。

 

3)インナーケア市場ですでにブランドを確立している各社も知恵を絞る。

ファンケル

 脂肪や糖吸収を抑えるとうたう主力ブランド「カロリミット」をサプリ以外でも開発・販売した。

グループ企業であるキリンホールディングスと連携し23年にお茶など2商品を開発。24年にも梅酒風味のノンアル飲料を発売した。いずれもサプリと同等の効果を得られるとしている。

同社は「将来的にサプリを手に取ってもらうための飲料だが、売れ行きは想定以上。今後もサプリにこだわらない商品作りを続ける」と話す。

 

DHC

 「未病」をテーマにこれまで主要顧客でなかった30代以下の需要開拓も目指す。

4月からはマルチビタミンサプリを発売し、5月から展開するCMには同世代のタレントを起用。症状が出る前からサプリを活用しバランス良く栄養を取ることで健康を保つことの重要性を訴える。

 

◆サプリ通販2位以下混戦 参入障壁が低く/はやり廃り速く

記事(出口広元)

(調査会社のTPCマーケティングリサーチ)

サプリの主要な販売ルートである「通信販売」のシェアはサントリーウエルネスが18.6%を占める。

2位のファンケルが3.8%、3位のDHCが3.5%。1%以上のシェアを持つ会社は30近くある情勢で、市場は拡大傾向にある一方で激しい競争環境にある。

 

法規制上は一般的な食品と同等に扱われ医薬品ほどの制限を受けず、参入障壁が低いことなども背景にあるもようだ。

新商品がSNSなどで次々と話題となるなど、はやり廃りのペースが速いのも市場の特徴だ。

(出口広元)