リンゴ・ミカン栽培適地、温暖化で3~5割「不適」に 2050年推計(24年4月10日 日本経済新聞電子版)
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(1)要点「栽培適地のうち3~5割は2050年ごろに「不適」となる」
日本の果物産地に地球温暖化が迫りつつある。気候予測データに基づいて計算すると、リンゴやミカンなどの今の栽培適地のうち3~5割は2050年ごろに「不適」となる。果実の需給を左右し、価格に影響する可能性もある。
(2)日本経済新聞は気象庁の「気候値メッシュ」と国立環境研究所の「気候変動適応情報プラットフォーム」のデータから、1キロメートル四方ごとに長期推計された平均気温を用いて栽培適地の変化を割り出した。
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の杉浦俊彦氏の研究を参考にした。
(3)リンゴ
生産に適温なのは年平均セ氏6~14度。現在は冷涼な気候の東北や長野県が主産地だ。
30年後には現在の適地の約3割が栽培不適となる。
「その方向感は23年の猛暑で明白に」
全国の平均気温は平年を1.29度上回り、観測史上最高となった。
リンゴは日焼けや着色不良が相次いだ。収穫量が減り、東京都中央卸売市場の卸値は前年より3~4割高い水準で推移した。
「危機感を覚える暑さだった」とJA全農長野の玉井浩技術審議役は振り返る。
低地では栽培が難しいと感じ、標高が高い場所に畑を移す農家も出てきているという。
(4)ミカン
熊本県農業研究センター果樹研究所の担当者は「日焼けや(実が腐りやすくなる)浮皮が多くなっている」と指摘する。
天草市など県南部では、一般的な温州ミカンより高い温度帯で栽培できる「不知火」のような品種の生産が増えている。
ミカン「関東や日本海側は日射量や斜面の向きなどに問題も」
生産の適温は15~18度で主に西日本の日照時間の長い太平洋側で栽培が多い。
暑すぎる環境は厳しく、いずれ西日本の海沿いを中心に栽培が難しくなるとみられる。50年ごろには現在の適地の5割が栽培に適さなくなる可能性がある。
「気温だけみれば、今後は関東や日本海側に新たな適地が広がるとも想定できる」
実際は日射量や斜面の向きなど生育に必要な他の要素が伴わない場合が多いとみられる。
(5)ブドウ「巨峰ほど色づきを気にしないシャインマスカット中心に」
夜の気温が下がらないことや降水量の増大が響く。福岡県の園芸振興課は「巨峰など黒系のブドウの色がつきにくく着色不良が増加傾向」と認める。
販売単価も高いシャインマスカットに生産を切り替える動きがある。JA全農ふくれん(福岡市)は「色づきを巨峰ほど気にしなくていい」と説明する。
(6)「気温上昇が新たな芽を生む場合もある」
愛媛県「生産量は右肩上がり」
04年以降、イタリア原産のブラッドオレンジの栽培が進む。JAえひめ南(宇和島市)の担当者は「以前に比べて冬を越しやすくなった」と感じている。生産量は右肩上がりだ。
北海道「温暖化による降雨や害虫の増加」などが懸念も」
赤ワインで代表的な醸造用ブドウ「ピノ・ノワール」の栽培面積が21年に61ヘクタールと10年間で約3倍に拡大した。北海道ワイン(小樽市)の齋藤浩司営農部長は「気温が上がることで一層熟すようになり、より良質なワインがつくれるかもしれない」と期待する。単純に楽観視はできず「温暖化による降雨や害虫の増加」などが懸念という。
◆遮光や肥料のやり方など、栽培で工夫必要に(24年4月10日 日本経済新聞電子版)
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(1)リンゴなどの産地
遮光したり肥料のやり方を変えたりと工夫を凝らす。
23年産では通常取る葉をあえて取らない「葉とらずリンゴ」で、日焼けなどの発生が従来の方法より減ったという。
青森県りんご協会の担当者は「着色不良への有効な対策と考えており、今後は省力化に加えて温暖化対策の観点からも生産が増えていく」と話す。国は優良品種への植え替えや資材の導入などを一部補助する。
(2)宇宙技術の利用
宇宙航空研究開発機構(JAXA)発スタートアップの天地人(東京・中央)は衛星画像や地理データから農作物の栽培適地を探す。規模拡大をめざす生産者らが注目している。
(3)「果樹は植えて数年間は収穫できないから投資を回収までに年数がかかる」
果樹は数十年単位で栽培する。植えて数年間は収穫できず、投資の回収に時間がかかるケースが多い。農研機構の杉浦氏は「長期的な視点に立ち、品目の転換を含めて産地単位で対策を進めていく必要がある」と指摘する。