三菱重工、出戻り大歓迎で応募殺到 退職者は「悪者」じゃない(24年4月8日 newsYahoo! 日経ビジネス)

 

記事

 

(1)要点「今ひろがる縁故採用 一度退社した社員を再雇用するアルムナイ採用も」

新たなカタチの縁故採用として広がる「ネオ縁故」。その一種で一度退社した社員を再雇用する「アルムナイ(卒業生)採用」も、縁をたどる企業にとっての新たな採用チャネルに育ってきた。業務内容や企業カルチャーを知るOB・OGに採用の門戸を開いておくため、コミュニティーをつくる動きが広がる。

 

リンク【関連画像】「リンクトイン」はビジネスパーソン向けSNSとして普及している(写真:Chinnapong/stock.adobe.com)

 

(2)(人材サービスのパーソルキャリア(東京・千代田))

2月、自社の退職者が集うアルムナイコミュニティーの交流会を開いた。

専用サイトでつながっている人々を対面式のオフ会に呼び、コミュニティーを盛り上げる目的だった。

(今回の対象)

転職先の管理系部門で人事や経営企画などでの人限定。

自動車や製薬など多様な企業に籍を置く人たちがにぎやかなひとときを過ごした。「パーソル時代、仕事は忙しかったが濃いつながりも多かった。集まる機会があると顔を出したくなる」。ある参加者はこう話した。

 

●「卒業生」は貴重な人材プール

 

(3)「キャリアオーナーシップ(働き手が自らのキャリアを会社任せにせず主体的に考え行動すること)を尊重」

(パーソルキャリア)

多い年には1000人前後を採用する。

アルムナイは貴重な人材プールだ。

23年4月にコミュニティーを発足。「キャリアオーナーシップ(働き手が自らのキャリアを会社任せにせず主体的に考え行動すること)を尊重しつつ良い採用につなげたい」(採用企画部の砥上貴恵氏)という。すでに約1000人が登録しており、約30人が同社に復帰した。

 

(4)いったん他の企業や業界でキャリアを積んだ上で再入社した働き手は組織に新しい風を吹き込む存在だ。

(プロダクト企画部の清水彩氏)

「再入社の人が多いと学び合う風土が育まれて刺激になる」と話す。

自身も転職先でベトナム人の開発チームを率いるなどして組織運営力や英語力を磨いた。

 

(5)「アルムナイ採用の2つのタイプ 「交流型」と「採用直結型」」

 

「交流型」の魅力 「会社のファンであり続けてもらうきっかけになる」という。

 

(6)三菱重工業は「採用直結型」アルムナイ採用

リクルートのカムバック採用代行サービスを導入。退職者が専用サイトに登録すれば経験に合った求人案件を見たり、コーディネーターに相談したりできる。

導入後、予想以上に登録が殺到。半年もたたないうちに数百人が登録し、すでに数人に内定を出した。専門性の高さからか航空部品などの部門が多かったという。

同社は年150人規模のキャリア採用計画の3分の1しか達成できない年もあるなど「キャリア採用は弱かった」(HR戦略部上席主任チーム統括の福岡祐一氏)が、サイトの発信情報も工夫し、アルムナイ採用の定着を狙う。

 

(7)「アルムナイコミュニティー」退職者を「悪者」扱いしない会社風土必要

海外が発祥で、世界78カ国に30万人以上のネットワークを持つ米アクセンチュアの事例などが有名だ。

日本でも三井物産など総合商社においてビジネスを支え合う仕組みとして存在したが、「ここ2年ほどで一気に採用手法としての側面が注目された」(ハッカズークの鈴木氏)。

一定以上のエンゲージメントがある組織で機能するため、退職者を「悪者」「異分子」などとしない風土づくりが重要だ。

 

(8)人材紹介会社を介さず一般の求職者に直接アプローチする手法

「あなたの今後のキャリアについて、ディスカッションしませんか」──。人材紹介会社などを介さず一般の求職者に直接アプローチする手法も増えている。特にSNSで応募者を募る「ソーシャルリクルーティング」では、米リンクトインの存在感が高まっている。

 

(9)(日本法人リンクトイン・ジャパン(東京・千代田)の田中若菜代表)

「企業が欲しているデジタル人材が多く登録している」と強みを語る。

自身もリンクトインで連絡を受け、米グーグルの日本法人グーグル合同会社の執行役員から転身した。

職歴やスキルを登録して交流するビジネス特化型SNSとして、米国では早くから転職に使うツールだった。

日本でも転職者の増加やリスキリング(学び直し)への意識の高まりで登録者が増加。

生成AI(人工知能)などの学習コンテンツを独自に増やしている戦略も奏功し、国内登録者数は400万人に達する勢いだ。

 

(10)「AIでスキルや職歴など条件設定し、自社にマッチしそうな人を探し、本人にダイレクトメール」

人事担当者が利用する場合、採用機能は定額課金制。

スキルや職歴など、条件を設定して自社にマッチしそうな人を探し、本人にダイレクトメールを送る。

経験だけでは選択肢が狭まるため、AIが検索を支援する。関係するスキルを学習中の人や、フォロー傾向からその会社に興味がありそうな人などを、候補として提案するといった機能を備える。

 

(11)(政府のデジタル庁の公募採用とリンクトイン採用)

22 年からリンクトインを活用してデジタル人材の採用につなげた。「採用はブランディング。SNSで積極的に情報発信し、将来の転職候補者を育てる」(田中氏)という発想が大事だ。リンクトインでは、多くの企業が公式アカウントを開き、事業内容や求人情報、世間の関心が高いESG(環境・社会・企業統治)活動などについて投稿している。

 

●問われているのは会社の魅力

(以下省略)