「厳しい処分断行」も幕引き見通せず…中堅・若手は不満、首相も自覚「全てを解決するものでない」(24年4月5日 産経新聞オンライン無料版)

 

写真 記者会見する茂木幹事長(中央)ら(4日、自民党本部で)

 

(1)要点

自民党執行部は、派閥の政治資金規正法違反事件を巡る党紀委員会の決定について、党として厳しい処分を断行したと強調した。野党は国会審議などを通じて追及を続ける構えを見せており、問題の幕引きは依然見通せていない。

 

(2)「政治不信を招いたことへの強い反省が必要だ。仲間を処分しなければならない苦しい思いもある」

 4日の党紀委終了後、茂木幹事長は記者会見でこう述べた。同席した党紀委の逢沢一郎委員長は「危機的状況にある党の再生につながる」と語った。

 

(3)「世論にアピールするために大量、重い処罰も」

執行部が39人の大量処分に踏み切ったのは、不正還流に対する党としての厳しい姿勢を世論にアピールする必要があるためだ。

当初、収支報告書への不記載額が「1000万円以上」の議員らを処分する案を検討したが、最終的に「500万円以上」に引き下げ、処分対象を広げた。

 

(4)「処分を受けた安倍派の中堅・若手らからは不満」

処分を受けた安倍派の中堅・若手らからは不満の声が上がった。

戒告の処分を受けた安倍派の大塚拓衆院議員は国会内で記者団に「党紀委の手続きが極めて短時間だ。極めて強い不信感を持っている」と語った。

 

(5)

野党は一斉に批判した。

立憲民主党の泉代表は「処分の軽重がぐちゃぐちゃで、国民不在の処分だ」と述べた。「次の総選挙で、国民の力で処分するしかない」とも話し、次期衆院選で「政治とカネ」の問題を争点に掲げる考えを強調した。

共産党の小池書記局長は記者会見で「真相解明抜きのお手盛り処分だ。けじめにはほど遠く、こんなことで幕引きを図ろうとすることは許されない」と語った。

日本維新の会の馬場代表は記者会見で、岸田派の元会計責任者が立件されたことなどを踏まえ、「不正があればトップが責任を取ることが一般社会の常識だ。首相が自らを処分すべきだ」と訴えた。

 

(6)

首相自身も疑惑の収束にほど遠い状況であることは自覚している。

4日の読売新聞のインタビューでは、「(処分によって)全てが解決するものではない。法改正を通じて再発防止に向けて結果を出していかなければならない」と述べた。

 

党紀委紛糾2時間 塩谷氏らに同情論も

 

 

(7)

4日の自民党の党紀委員会は、処分内容を巡って議論が紛糾し、審査は2時間弱に及んだ。出席者によると、

 1)安倍派の塩谷立・元文部科学相と世耕弘成・前参院幹事長に「離党勧告」処分が科されることに対し、「政治生命を絶つもので重過ぎる」との同情論が提起される一方、

 2)「不記載額が少額でも処分すべきだ」と、より厳しい対応を求める声もあった。

 3)結論を先送りし、再度、党紀委を開くべきだとの声も上がったという。

 

(8)外部有識者の一人で評論家の金美齢氏は委員会終了後、記者団に「厳しすぎで、処罰だけが先行するのには納得がいかない」と述べた。

 

衆院特別委40人に増…11日設置へ

 

(9)「衆院で政治改革特別委員会設置検討 現在の政治倫理確立・公選法改正特別委を改組」

衆院が11日の本会議で、自民党派閥の政治資金規正法違反事件を受けた政治改革特別委員会を設置する方向で検討していることが分かった。複数の与野党関係者が明らかにした。

現在の政治倫理確立・公選法改正特別委を改組し、委員数を35人から40人に増員する。

会派別の委員数は、自民党・無所属の会23、立憲民主・無所属8、日本維新の会・教育無償化を実現する会4、公明党3、共産党1、国民民主党・無所属クラブ1とする。配分がなかった少数会派に対しては、多数会派から割り当てることを検討する。

 

(10)処分の線引き 曖昧…曽根泰教・慶応大名誉教授

 

今回の処分結果は、安倍、二階両派議員の裏金化への関与度合いなどが十分に精査されたとは思えず、線引きも曖昧だ。

処分対象を政治資金収支報告書への不記載額が過去5年間で500万円以上とした根拠や、還流継続を協議した安倍派元幹部の間で処分に差がある理由も判然としない。

 そもそも裏金化の理由や、いつ、誰が、どのように始めたのかが明らかになっていない。政治倫理審査会に出席した安倍派元幹部は「分からない。責任は自分にはない」と繰り返し、説明責任を果たそうという姿勢もみられなかった。

 実態解明に向け、リーダーシップを発揮しなかった岸田首相の責任も重い。首相が主導した派閥解消や今回の処分も、国民に「(批判を回避するための)自己保身や政治的ライバルを退けるための行動ではないか」と映る可能性すらある。

 首相は処分を機に政権浮揚を図りたいだろうが、容易ではない。信頼回復には、政治資金の透明性確保など実効性のある対策を講ずる必要がある。「政治資金委員会」のようなチェック機関の設置も一案ではないか。与野党には選挙制度や国会改革などを含めた骨太の政治改革が求められる。

 

<私見:

BSフジプライムニュースやユーチューブ動画では

1)安倍派の塩谷氏が「派閥の代表だから」という大義で離党を決断していれば、安倍派のダメージはもっと小さくて済んだのではないか説も。

2)二階氏の選挙不出馬は「派閥の責任を取って」という大義だった。世間的には塩谷氏、岸田氏も離党せざるを得なくなるという圧力に説。

3)二階氏の選挙不出馬は「自分の息子を後継議員にしてもらうため執行部に球投げた」という説も。

4)ところが二階氏には息子3人いて、長男はダメで三男が後継と目されているが、すんなり後継が一人に決まらない可能性もある説。

5)二階氏を頼って国政復帰を狙っていた東京都知事小池さんは、二階氏の選挙不出馬で東京15区への立候補はなくなった説。だから「都民ファーストの会」が母体の「ファーストの会」が擁立する乙武洋匡(おとたけひろただ)を身代わりにたてた説。

6)しかし、乙武氏は前回選挙で、当時自民推薦候補の対抗馬だった前区長木村弥生被告(58)の応援演説など積極的に支援した「敵側」の立場だった。そのため自民党内には「木村氏側の人間には乗れない」説。

7)さらに乙武氏には女性問題を起こした過去があるために、女性支援者が多い公明党は「乙武支援」はできない説。>