天気予報、有料「当たり」 登山特化や頭痛対策も 私に必要な情報、1日数十円で(24年4月4日 日本経済新聞電子版)

 

記事(五味梨緒奈)

 

(1)要点

テレビやインターネットなどを見れば無料で確認できる天気予報サービスで、自分にあったより精細な有料情報を求める利用者が増えている。

月200~600円ほどと1日あたり数十円で、生活や趣味、健康に生かせる。気象予測の精度が高まったことで、かつては「当たらない」ともいわれた天気予報が進化してきた。

 

 

(2)ウェザーニューズ

「いまは晴れているけど、このあたりにゲリラ豪雨がくるかもしれない。早めに子どもを迎えにいこう」――。ウェザーニューズが提供する「ウェザーニュース」の有料会員は、位置情報に連動して今いる場所の天気に関するプッシュ通知を受け取ったり、雨雲レーダーを30時間先まで見られたりする。主なプランで月額315~360円。

「毎日プラス10円で、生活をちょっと便利に」がコンセプトだ。

有料サービスの利用者数は非公表だが、無料も含めた同アプリのダウンロード数は2020年以降特に伸び続けて4200万件に達している。

有料会員数やアクセス数も伸びている。

 

(3)「tenki.jp登山天気」や「頭痛ーる」も

ALiNKインターネットと日本気象協会が共同で運営する月240~550円の「tenki.jp登山天気」や、ベルシステム24(東京・港)が提供する「頭痛ーる」の月300円の有料プランなど、気象情報を基に特定の利用者層向けに特化した課金サービスも広がっている。

無料でもおおむねの情報が手に入る天気予報を、お金を払ってでもより詳しく知りたい人が増えた背景には、まず予報精度の向上がある。

 

(4)天気予報ができるには、まずは日本の気象庁や海外の機関が気温や風など現在の観測データを集めて解析し、数値予報をつくる。

気象庁や民間の気象会社は数値予報から、さらに統計処理や予報官による分析を経て、一般に伝えられる天気予報にする。観測データの増加やコンピューター性能の向上で予報精度は年々高まっている。

異常気象の発生頻度が高まる中で、正確な予報の需要は高い。

 

(5)細分化した情報発信が増え、人々が天気予報を生活に生かしやすくなったことも背景だ。たとえば紫外線や花粉などの予測や、ゴルフや花見といったアウトドア向けの情報、気圧などの健康への影響など、具体的な行動につなげやすい形での発信が増えた。スマホの位置情報の活用で、個人により適した情報も得やすくなった。

 

(6)「登山天気」は全機能を有料で提供する。

麓までしかわからない通常の天気予報に対し、山頂までの天気が詳細にわかるほか、服装や紫外線情報も伝える。「山ごとの天気を見てどこに登ろうか考えることが多いので、前日によく確認する」(年間15回以上登山する40歳代の男性)。サービスの継続率も高く、月額よりも年4980円の契約が多いという。

 

(7)「頭痛ーる」は、気圧の変化で頭痛などの体の不調が起きやすい人に向け

気圧の上下の予報をグラフで示し、不調が起こりやすいタイミングに「警戒」や「注意」などを表示する。

体調や服薬の状況を記録しておくこともでき、自分の傾向を把握し対策をしやすくなる。有料版では予報の期間を長くしたり、体調や服薬の記録を月ごとに集計する機能が付いたりする。

 

(8)天気予報は防災情報でもある

各事業者は「基本的な気象情報は無料で広く使えるようにしている」と口をそろえ、広告収入を中心としている。

一方で異常気象の発生が今後も増える懸念があるほか、花粉症の悩みや気圧変化による頭痛など行動や体調が天気に左右される人も目立ち、有料サービスのニーズはさらに増えそうだ。

働き方改革で余暇も大事になるなか、アウトドアの充実などの観点から天気予報の役割も増しそうだ。

予報の多様化には、人々の天気とうまく付き合い暮らしを底上げしたいという思いの強まりが表れているようだ。

(五味梨緒奈)