物価・働き方変わる生活 値上げ、電気代500円前後(24年4月1日 日本経済新聞電子版)

 

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(1)4月からの新年度を迎え、食品や雑貨、サービスの値上げが相次ぐ。

物価上昇は家計に直結するものの、賃上げとの好循環が生まれれば、日本の経済にはプラスに働く。

トラック運転手や医師らの残業規制が強化され、一般生活に影響が及ぶ可能性もある。

 

◆ 四月からこう変わる

 

値上げ 

 電気料金     再生エネ賦課金

 家庭紙      ティッシュ、トイレ紙

 宅配料金     ヤマト、佐川急便

 ウイスキー    サントリー アサヒビール

 トマト調味料   キッコーマン

 ハム・ソーセージ 日ハム、伊藤ハム

働き方・企業活動

 残業規制     医師・物流ドライバー・建設作業員

 賃上げ促進税法拡充  

 企業の交際費上限を引き上げ

医療・生活

 後期高齢者医療(75歳以上)の保険料

 現役の医療保険料 健保組合共済組合は引上げ、協会健保引下げ

 介護保険料引上げ

 新型コロナ治療薬の公費補助金廃止 ワクチン接種の補助縮小

 政府の電気自動車(EV)補助金

 ライドシェア解禁

 所有者不明の土地対策として不動産相続したら登記義務化

 嫡出推定制度見直し

教育

 給付型奨学金支援対象拡大(世帯年収上限を600万円に引上げ)

 中学教科書 英語からデジタル化音声教材

 (東京都)公私全高校授業料無償化(大阪府)高校授業料完全無償化

金融

 三井住友、みずほが普通預金金利を0.02%に引上げ

 金融経済教育推進機構発足(政府、日銀、全銀協、日証協が出資)

 

 

 

 

 

(2)2024年度も生活に身近な分野での値上げが続く。帝国データバンクによると、食品メーカー195社が4月に価格を引き上げる商品は2806品目に達する。

目立つのが「加工食品」で日本ハムなど食肉大手4社がハムやソーセージを値上げする。サントリーも国産ウイスキーの希望小売価格を最大で2倍以上に引き上げる。「サントリーウイスキー 響30年」は税別16万円から36万円になる。

背景には原材料高に加え、人件費や物流費の上昇がある。足元で一時1ドル=151円台後半まで進む円安も輸入原材料の調達コストを押し上げる。総務省によると、2月の消費者物価指数は変動の大きい生鮮食品を除く総合が前年同月比で2.8%上昇した。

 

(3)物価高を賃上げで吸収できれば、景気の好循環につながる。24年の春季労使交渉で賃上げ率は33年ぶりの高水準となる勢いだ。野村証券の藤原悟史氏は「食品は高いインフレ率が続くが、値上げは一時期に比べ落ち着いている。賃金上昇に伴い消費マインドに明るさが出てくるだろう」とみる。

 

写真 物流業界も値上げで従業員の待遇改善を進める

 

値上げは電力やサービス分野でも相次ぐ。電気代は5月請求分(4月使用分)から大手電力10社全社で上がる。一般家庭の電気代は平均的な使用量に基づくと前月比で441~579円高まる。再生可能エネルギーの普及に向けて国が電気代に上乗せする「賦課金」の単価上昇を反映させる。

佐川急便は個人向けの宅配便の基本運賃を平均7%ほど引き上げる。残業規制の強化で運転手の不足が懸念される「2024年問題」を受け、ドライバーの代わりに荷物を積み込む人材の確保など待遇改善に振り向ける。ヤマト運輸も宅配便の一部商品で約2%値上げする。