JAXAの月面探査機SLIMが再起動、2度越夜 マイナス170度克服(24年3月29日 日本経済新聞電子版)

 

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写真 2回目の夜を越え周囲の様子を撮影した=スリムのXの公式アカウントから引用

 

(1)要点「極低温の夜を耐えられない設計にも拘わらず」

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は28日、日本初の月面着陸に成功した無人探査機「SLIM(スリム)」が再起動したと明らかにした。

月は2週間に1度、昼夜が入れ替わるため、夜は極低温にさらされる。夜を耐えられない設計にしていたが、2度も越夜できたことになる。

どこまで機体が機能できるか確認することで、今後の月探査機の開発に役立つとみている。

 

(2)JAXAはスリムのプロジェクトに関するX(旧ツイッター)の公式アカウントで最新の稼働状況を報告した。

27日夜、太陽電池で発電するスリムとの通信を確立し、着陸時に使ったカメラで周囲を撮影した。

 取得データによると、温度を測るセンサーや使用していないバッテリーで不調が出始めているものの、機体の機能を維持しているという。

 

(3)月は約2週間ごとに昼と夜が入れ替わり、昼の温度はセ氏110度、夜はマイナス170度にもなる。

機器が温度変化に耐えて再び電源を起動する越夜は難しく、2023年夏に着陸したインドの探査機は通信を確立できなかった。

2月に民間初の着陸に成功した米インテュイティブ・マシンズも翌月に運用を終了した。

 

(4)JAXAが開発したスリムは世界初となる半径100メートル以内への「ピンポイント着陸」と、月の岩石の成分などを調べる科学観測が目的だった。

1月20日に精密着陸に成功後、約1週間後に科学観測を実施した。太陽が沈んだため休眠状態に入り、2月25日に1回目の越夜の成功を確認した。