相乗りタクシー広がる 料金抑え需要開拓 ライドシェアに対抗(24年3月28日 日本経済新聞電子版)
記事(高垣祐郷)
(1)日の丸交通(東京・文京)などタクシー各社が、相乗りサービスで新たなタクシー需要を掘り起こそうとしている。
1人で乗車するよりも安い料金に設定する。
4月から一般ドライバーが有償で乗客を運ぶ「ライドシェア」が条件付きで解禁され、ライドシェアとの競争も予想されるなか、タクシーの新たな利用法を消費者に提示する。
写真 日の丸交通は夜間・早朝限定で相乗りサービスを展開する
(2)「午後8時から午前6時までの時間限定 羽田空港近くに営業所を新設」
日の丸交通は相乗りサービスを東京都心部で提供している。午後8時から午前6時までの時間限定。
交通関連のシェアリングサービスを手掛けるニアミー(東京・中央)と組み、2023年末からサービスを始めた。
料金は1人でタクシーに乗る場合に比べて最大で50%安くする。
羽田空港近くに営業所を新設し、空港と都心間で相乗りサービスを展開する計画もある。
図表を保存
(3)「子どもの送迎に特化した相乗りサービス」
スタートアップのhab(横浜市)は地元のタクシー事業者3社と協業し、子どもの送迎に特化した相乗りサービスを4月に横浜市内で始める。
料金は500~1000円程度に抑える。スイミング教室などを運営する東急スポーツシステム(東京・渋谷)などと組み、企業側からサービス利用料を得て、1時間6000円程度かかるタクシーの貸し切り料金を賄う計画だ。
(4)「コロナ禍でタクシー業界から人材が2割流出」
全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連、東京・千代田)によると、23年12月の法人タクシー運転手数は23万人と19年比で2割減っている。
運転手不足は、タクシー業界が反対してきたライドシェア解禁の理由にもなった。相乗りサービスであれば、運転手を増やさずに輸送力を上げることができる。タクシー各社にとって始めやすい新サービスだ。
(5)「午後11時から午前2時までの時間限定」
日本交通も3月下旬までの期間限定で、関西に拠点を持つグループ会社を通じて、大阪市で相乗りタクシーサービスを実証実験中だ。午後11時から午前2時までの時間限定のサービスで、料金は通常のタクシーに比べて最大40%割り引く。事業展開が可能か需要を見極める。
(6)ライドシェアは24年4月に、タクシー会社が運行管理し、車両不足が深刻な地域や時間帯に絞って限定解禁される。政府はタクシー会社以外の参入を認めるかどうかや、地域や時間帯の制限を撤廃するかについて6月をめどに判断する。
タクシー会社以外の参入が認められると、タクシー会社にとっては逆風となる。
タクシー会社がタクシー運転手を増やすには賃上げなど待遇改善が不可欠だ。相乗りサービスはタクシー1台あたりの収益向上につながる可能性がある。賃上げ原資となる利益の増加につながる新たなサービスの開発が、タクシー各社に求められている。
(高垣祐郷)