<主張>大谷の釈明声明 言葉を信じて見守りたい(産経新聞社説)(24年3月27日 産経新聞オンライン無料版)

 

記事

 

写真 水原一平氏の違法賭博問題に関して、硬い表情で記者対応するドジャースの大谷翔平選手(Sportsnet LA/Los Angeles Dodgers提供・共同)

 

大リーグにおける大谷翔平の投打にわたる活躍は多くの日本人にとって朝の活力の源泉だった。「快投乱麻」で強打者をねじ伏せ、驚異的飛距離の本塁打を量産してきた。

「勝ったね」「今日も打ったね」で始まる朝の会話は、その日一日を明るくした。もちろん、大谷にも野球にも興味がない人はいるだろうが、彼に嫌悪感を抱く人はそう多くあるまい。

 

日本人のみならず、全野球少年の憧れの的となった大谷が、事もあろうにプロスポーツ選手としては致命的な違法賭博問題への関与を問われた。日米を中心にメディアの大きな関心事となったのは当然である。

そして大谷は、自ら登壇して声明を発表した。賭博やブックメーカーへの送金における関与を明確に否定し、賭博による多額の借金を大谷の口座から送金したとされる元専属通訳、水原一平氏の虚偽の弁明の数々を、時系列を追って説明した。

 

そこに矛盾はなく、質疑の応答こそなかったものの、表情や態度は、従来の大谷の良好な印象を覆すものではなかった。素顔をさらして臨む会見は、往々にして噓を許さない。

 

疑えばきりはなく、米メディアにも「疑惑は晴れていない」といった厳しい論調はある。ただしこれ以上の真偽の追及は捜査当局に任せるしかなく、ファンは大谷の言葉を信じて応援を続けるのみだろう。

救いは、大谷を知る大リーグの仲間たちが「大谷は野球に夢中だ」「彼が賭け事に熱中するはずがない」と口をそろえていることだ。そうした信頼は、大谷が過去のシーズンを通して真摯(しんし)に野球に取り組んできたことで得たものである。

 

「警察当局に全面的に協力したい」と話した大谷が今後、本当に専心すべきは、バットを振り、手術した右ひじのリハビリに励んで一日も早いマウンドへの復帰を実現することだ。

野球での活躍でファンを喜ばせることである。

 

水原氏は通訳にとどまらず、練習や生活のパートナーとして極めて大きな存在だった。

大谷は「信頼していた方の過ちは悲しく、ショック」「気持ちを切り替えるのは難しい」とも語った。新天地ドジャースに移籍し、新妻とともに迎えるただでさえ難しいシーズンを、熱く静かに見守りたい。