非正規社員も待遇改善 イオン系40社、正社員と同等 外食・製造業に拡大(24年3月21日 日本経済新聞電子版)

 

記事(浅山亮)

 

(1)要点

イオンは2024年度からグループ40社で、パートの待遇を同じ業務を手がける正社員と同等にする制度を順次導入する。

食品スーパー大手のライフコーポレーションも勤務する地域・店舗を絞った社員の種別を廃止し、正社員と同じ待遇とした。

非正規待遇(総合・経済面きょうのことば)の従業員は被雇用者全体の4割を占め、待遇改善は外食や製造業にも広がる。

 

 

 

(2)(全国スーパーマーケット協会)

スーパーの店頭など現場で働く従業員のうち、パートやアルバイトを含む非正規待遇の割合は23年で71%だった。

(帝国データバンク)

24年1月調査で非正規が不足と答えた飲食料品小売企業は51%に達し、前年同月に比べると4.6ポイント和らいだが、なお過半が不足している。

 

(3)イオン

国内最多の約40万人のパートを抱えるイオンは24年度以降、総合スーパーをはじめとした40社のグループ企業に、正社員と同等の基本給や手当をパートにも支給する制度の導入を検討する。

総合スーパーを展開するイオンリテールが先行して導入していたが優秀な人材定着も狙いグループ会社にも拡大させる。

 

(4)イオンリテールの場合

 正社員と同じ待遇とする社員は昇格試験に合格し、月120時間以上働くことが条件となる。

売り場責任者を務める約150人が登用されている。一部地域では従来と比べて年収が2割程度上がったという。

今後、40社のグループ企業はイオンリテールの事例を参考にして、正社員の待遇に移行できる対象者の条件や賃金の算出法などを詰める。

 

(5)「小売・飲食業は非正規雇用への依存度が高い」

非正規割合は宿泊業・飲食サービス業で8割、食品スーパーなど卸売業・小売業は5割を占める。

 

ライフコーポレーション

イオン以外にも、食品スーパー大手のライフコーポレーションは勤務地を絞った社員の種別である「限定社員」を廃止し、正社員と同じ待遇にそろえた。限定社員から転換した正社員は年収が平均15%程度増加した。

ヤオコー

食品スーパーのヤオコーも23年、正社員のみ有給休暇扱いとしていた配偶者出産休暇を、パートについても有給とした。

 

(6)製造業

 人手不足が強まる製造業でも非正規従業員の待遇改善が広がる。

ダイキン工業

 2年連続でパートやアルバイトといった非正規従業員の給与を一斉に引き上げる。2年連続で時給を100円ずつ増やし、フルタイムで働くと2年前に比べ月額3万2000円程度の増額となる。ダイキングループの非正規従業員は約1500人で、国内社員の1割程度にあたる。

 

(7)「1時間当たりの給与は非正規雇用は正社員の7割」

20年の同一労働同一賃金制度導入後も正規雇用と非正規雇用の待遇格差は大きい。

22年の1時間当たりの給与で比較すると非正規雇用は正社員の7割の水準だ。

 

(8)「UAゼンセン 制度昇給などを含むパート1人当たりの賃上げ率は6.45%」

小売りや外食などの労働組合が加盟するUAゼンセンが14日発表した春季労使交渉の妥結状況(1次集計)によれば、制度昇給などを含むパート1人当たりの賃上げ率は6.45%と12年の同団体結成後で最高となった。

(浅山亮)