教育の経済学(上)小中から「視線は海外進学」 インター・専門塾、地方でも 国際人材は競争力源泉(24年3月19日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

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元々は海外から日本に来て働く駐在員の子女向けの存在だったインターナショナルスクールへの関心を日本の家庭が高めている。卒業後に海外大学に進学するケースが多く、将来の選択肢が広がるとみるためだ。

背景にあるのは日本企業のグローバル化の加速だ。

 

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実質GDP(国内総生産)は30年で1.3倍に増えたのに対し輸出は3.0倍、輸入は2.5倍に膨らんだ。30年前に6%だった製造業の海外での現地生産比率は23年度は24%になった。

ただ、その変化とは裏腹に日本は海外で学ぶ人が人口比で韓国や欧州各国より少ない。「内向き」と指摘されてきたが風向きは変わりつつある。

 

 

(3)「小学生の息子と海外進学のイベントに参加 主催は「SAPIX」運営の日本入試センター」

「本人の希望次第だが、早いうちに海外でもまれてほしい」。

社会人になってからの米国留学で英語に苦労したという古田直裕さんは10日、小学生の息子と海外進学のイベントに参加した。

開催したのは大手進学塾「SAPIX」などを運営する日本入試センター。

高宮信乃国際教育事業本部長は「感度の高い家庭ほど日本経済が縮小するとの危機意識が強い。中学受験の先に海外大への進学を見据え、早めに備えている」と語る。

100人を超える参加者で目立ったのは小中学生の親子連れだ。かつては日本の大学に入ってから留学を考える人が多かったが低年齢化が進む。

 

(4)「海外大学への進学支援は私立で始まり公立高校や自治体に広がっている」

海外大学への進学支援は私立を中心に広がってきたが、最近では公立高校や自治体も積極的になっている。自治体で先行する熊本県は13年、県内の学生向けに、願書に必要なエッセーの書き方などを指導する「海外チャレンジ塾」を開いた。

指導はベネッセホールディングス(HD)が運営する海外大受験の専門塾「ルートH」が担う。受講者のうちこれまで47人が海外大に進んだ。

08年に開校したルートHの事業責任者の辻村慎乃介氏は「足元の問い合わせはコロナ前と比べて個人からで3.5倍、学校や行政からで3倍程度に増えた」と話す。

 

(5)「米国名門私立大の授業料などは年1000万円」

早くから世界を見据えて力をつけたいと考える人が増えるなか、重要なのは日本の国際競争力につなげられるかだ。

足元の円安で海外へ送り出す家庭の負担は増している。

米国の名門私立大の場合、授業料などは年1000万円を超える。本人や家庭が投じるコストが大きいだけに、日本に戻って働く環境が魅力的かが問われる。

 

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(毎年多くの卒業生を海外大に送り出す渋谷教育学園渋谷中学高等学校の高際伊都子校長)

「グローバル化とは世界基準と向き合うこと」と説く。

世界で戦える人材を取り込み、いっそうの成長を目指すには企業や社会環境の変化も必要になる。

日本経済はグローバル化や働き方改革で家庭や企業のあり方が変わってきた。成長力の礎となる教育もその変化に対応し、新たな形を模索している。経済の視点から変わる学びの現場を追う。