春秋(24年3月16日 日本経済新聞電子版)
記事
(1)1カ月に2万千円。
甘いものに目がないけれど、1つ54円のシュークリームを買うか否か、真剣に迷う。漫画誌「モーニング」に連載中の「定額制夫のこづかい万歳」は、作者である吉本浩二さんのほぼ実体験だという。金額はスタートした2019年から変わらない。
(2)▼仕事部屋の照明器具の家計負担が却下され、「頼むからこづかいあげてくれ~」。
妻に訴える姿には悲壮感さえ漂うが、主人公はこの状況を楽しんでいる。限られた小遣いをやりくりする悩みと工夫が読者の共感を呼ぶのだ。人気の理由を吉本さんは「暮らしに不安を持っている人が多いからかもしれません」と分析する。
(3)▼連合がきのう公表した春季労使交渉の回答状況によると、賃上げ率の平均は5%を超えた。
組合の要求を上回った大手企業もある。値上げラッシュが続くなか、不安を和らげる朗報といえよう。でも中小はこれからが本番だし、1年限りでは手放しで喜ぶわけにもいかぬ。好循環に向けた次の一歩を慎重に見守る頃合いか。
(4)▼話を小遣いに戻すと、増減のモノサシが収入だけではないという方もおられるようだ。
「こづかいもマイナス金利と妻が言う」。数年前のサラリーマン川柳にあった入選句だ。10年以上続いた金融政策も修正が取り沙汰されている。詠み人の家庭ではこの先、いかなる交渉が繰り広げられるのだろうか。ちょっと気になる。