西日本は地震多発地帯 続く余震、巨大災害に備えよ 東日本大震災13年(24年3月11日 産経新聞オンライン無料版)
記事の概要
(1)「南海トラフ地震の前に西日本内陸地震が増えることが分かっている」
(2)「震源から金沢市を含む100キロ圏内で今後も震度7の地震の発生もありうる」
(3)「震度7クラスの地震は他の断層の活動に影響したり大きな余震に繋がる」
(4)「慶長地震 中央構造線の断層と六甲・淡路島、有馬-高槻断層帯が連鎖」
(5)「近畿は山形・新潟~大阪湾・淡路島にいたる「新潟-神戸ひずみ集中帯」に含まれる」
(6)「南海トラフ地震の前には西日本で内陸地震が増える」
(7)「大阪京都滋賀奈良などは大断層帯が多い地域なのに大きい内陸地震が起きていない」
■生活再建から創造的復興へ、国民に意識変革促せ…関西大特別任命教授 河田恵昭さん
「能登半島地震は阪神大震災と同様に内陸地震」
「能登半島地震の被害は南海トラフ地震で想定した被害の縮図のようだった」
「能登半島地震の被害は、南海トラフ地震で想定した被害と同じだった」
「平成19年震度6強以後、群発地震、昨年震度6強にもかかわらず、被害に対応できないのはなぜか」
「阪神大震災以降、災害のたびに「生活再建」が優先され、災害に強いまちづくりの合意は難しかった」
「創造的復興」
「意識変革には憲法改正し災害に強い創造的復興が宿命だと明記することが必要」
記事(北村 理)
(1)「南海トラフ地震の前に西日本内陸地震が増えることが分かっている」
平成23年東日本大震災から13年。世界有数の巨大地震の影響で各地で余震が続く。
震度7の地震の影響は長く続くといわれる。今年元日に起きた能登半島地震の影響も懸念される。南海トラフ地震の前に西日本で内陸地震が増えることが分かっている。
今後も避けられない巨大災害に対し、7年阪神大震災の教訓を発信し続ける関西大の河田恵昭特別任命教授は「新しい社会づくりのきっかけとするぐらい強い気持ちで立ち向かうべき」と呼びかける。
(2)「震源から金沢市を含む100キロ圏内で今後も震度7の地震の発生もありうる」
令和6年1月1日に起きた能登半島地震は、内陸地震としては最大級の地震となった。
以前は1891年の濃尾地震が最大級といわれていたが、断層のずれによる地震規模を表すMw(モーメントマグニチュード)は濃尾地震が7・4に対し、能登半島地震は7・5と上回った。
(東北大の遠田晋次教授(地震地質学))
「震源から金沢市を含む100キロ圏内で地震活動が活発になっており、今後震度7の地震の発生もありうる」と指摘する。
(3)「震度7クラスの地震は他の断層の活動に影響したり大きな余震に繋がる」
震度7クラスの揺れを引き起こす地震は、発生後、他の断層の活動に影響を与える。
その時間的スパンは数十年から百年単位に及ぶこともあるという。
阪神大震災は、その約400年前の慶長地震の余震との見方があり、阪神大震災の18年後にはその余震とみられる淡路島地震が発生した。
(4)「慶長地震 中央構造線の断層と六甲・淡路島、有馬-高槻断層帯が連鎖」
大分、愛媛など400キロに及ぶ中央構造線の断層が連鎖し、六甲・淡路島、有馬-高槻断層帯でも地震を引き起こしたとされる。それにより、豊臣秀吉がいた伏見城が倒壊し城内で数百人が死亡した。
(5)「近畿は山形・新潟~大阪湾・淡路島にいたる「新潟-神戸ひずみ集中帯」に含まれる」
こうしてみると近畿地方は、濃尾、天正地震の起きた中部地方と共に歴史上地震が多い地域だとわかる。近畿地方は山形・新潟から大阪湾・淡路島にいたる「新潟-神戸ひずみ集中帯」に含まれる。
集中帯は地殻のひずみが大きく地震が起こりやすい。近年では阪神大震災、新潟県中越・中越沖地震、そして大阪北部地震などがそうだ。
(6)「南海トラフ地震の前には西日本で内陸地震が増える」
また、今後数十年の間に発生が懸念される南海トラフ地震の前には西日本で内陸地震が増えるとされる。
陸側と海側のプレートがぶつかっている南海トラフではひずみが蓄積されると大津波を伴う地震が起きる。そのひずみが蓄積される過程で内陸地震を誘発するというわけだ。
(7)「大阪京都滋賀奈良などは大断層帯が多い地域なのに大きい内陸地震が起きていない」
特に大阪、京都、滋賀、奈良などは日本有数の大断層帯が多い地域ながら、近年大きい内陸地震が起きておらず、警戒が必要だ。(北村理)
■生活再建から創造的復興へ、国民に意識変革促せ…関西大特別任命教授 河田恵昭さん
(河田恵昭さん)
能登半島へ地震の調査に赴いたが、半島全体が深刻な被害にあっており、これまで震度7の地震で被災した場所をみたなかで一番困難な被災地だと感じた。
「能登半島地震は阪神大震災と同様に内陸地震」
東日本大震災のように大津波を引き起こすプレート境界地震である南海トラフ地震と異なり、阪神大震災のような内陸地震であった。
「能登半島地震の被害は、南海トラフ地震で想定した被害と同じだった」
ただ、その被害の形態は津波、地震、火災、道路の寸断による孤立、土砂災害、ライフラインの復旧の遅れなど、平成24年に南海トラフ地震の被害想定をまとめた立場からみると、南海トラフ地震で想定されている被害の〝縮図〟だと思える。
「平成19年震度6強以後、群発地震、昨年震度6強にもかかわらず、被害に対応できないのはなぜか」
こうした深刻な被害は、能登半島地震が国内最大級となった内陸地震が原因となったことも当然ある。しかしながら、近年の能登半島では平成19年に震度6強の地震があって以後、ここ数年群発地震が続き、昨年も震度6強の地震があった。にもかかわらず、全く初めて地震を経験したような被害様相となった。
「阪神大震災以降、災害のたびに「生活再建」が優先され、災害に強いまちづくりの合意は難しかった」
その背景には、阪神大震災以降、災害のたびに「生活再建」が優先され、災害に強いまちづくりを目指す「創造的復興」が取り組まれてこなかったことがある。
「創造的復興」
創造的復興は101年前の関東大震災後にも「帝都復興事業」として始まった。そこでは災害に強い首都建設が目指されたはずだった。しかし、現在の東京は年々一極集中が進み、防災上、危険極まりない首都となっている。
こう考えると、災害に強いまちづくりを目指す創造的復興は、社会情勢の変化に伴い、未来永劫(みらいえいごう)取り組まれるべきものだ。
「意識変革には憲法改正し災害に強い創造的復興が宿命だと明記することが必要」
創造的復興とは、震災前のまちに戻すことではなく、全く新しい価値を生み出し人が集まり、災害に負けない活力あふれたまちづくりを目指すことだ。
大災害に遭遇すると、いくらお金をかけてもまちが元に戻ることはあり得ない。そのことは、阪神大震災以降の災害による被災地の有様が示している。
こうした意識変革を国民に求めるには、憲法を改正し、われわれ災害列島に住む日本人は、災害に強い創造的復興に取り組むことが宿命であることを憲法に明記し、広く国民に知らしめ対策を求めることが不可欠だと考えている。
来年は阪神大震災から30年となるが、大災害への意識変革を国民に促す機会とすべきだろう。
かわた・よしあき 専門は防災・減災・縮災研究。京都大名誉教授。人と防災未来センター長。憲法改正を推進する「ニューレジリエンスフォーラム」共同代表。著書に「津波災害」(岩波新書)など。