警戒区域深くに船舶、誘導も間に合わず カイロスロケット打ち上げ延期「教訓生かす」(24年3月9日 産経新聞オンライン無料版)

 

記事(花輪 理徳)

 

 

 

写真 カイロスロケットの打ち上げ延期を受けて、記者会見するスペースワンの阿部耕三執行役員=9日午後、和歌山県那智勝浦町(彦野公太朗撮影)

 

(1)9日午前11時過ぎに予定していた小型固体燃料ロケット「カイロス」初号機の打ち上げを延期した宇宙事業会社「スペースワン」(東京都港区)は同日午後、記者会見し、延期の理由について安全確保のために設定していた「海上警戒区域」に船舶が残留していたからだったと発表した。

機体に異常はなかった。

次回の打ち上げは13日以降になるといい、同社の阿部耕三執行役員は「社員一同、民間初の快挙を何としても実現する思いでいる」とリベンジを誓った。

 

(2)同社は打ち上げにあたり、安全確保のため発射場周辺の海域に6・5キロ四方の警戒区域を設定。発射前後の時間帯はこの海域を通らないよう、呼び掛けていた。

同社によると、発射予定時刻の10分前になっても区域内に残留する船舶を確認。安全に打ち上げられる限界の11時17分12秒まで発射を延期したが、区域外に移動することができなかったという。

 

(3)警戒区域については事前に関係行政機関に相談の上、地元の団体や個人に説明していた。当日も約10隻の警戒船で周辺を監視し、接近する船舶に無線で方向転換を促すなどしていたという。

エリアの東側に残留していた船舶に警戒船が接近し、区域外に誘導しようとしたが区域深くに進入しており、間に合わなかった。同社は今後、詳しい経緯を調べる。

 

(4)12日に国際宇宙ステーション(ISS)からの宇宙飛行士の帰還が予定されていることもあり、次回の打ち上げは13日以降になる見通し。

阿部氏は「改善すべき点は教訓として次に生かしたい」と話し、船舶への呼びかけの時期を早めるなど対策を強化して次回の発射に臨む考えを示した。