コラム:アップル離れにとどまらない中国消費者の嗜好変化(24年3月8日 ロイター日本語電子版無料版)

 

写真はiPhone15プロと、ファーウェイのスマホを持つ女性。昨年9月、上海のアップルストアで撮影(2024年 ロイター/Aly Song)

 

記事[トロント 6日 BREAKINGVIEWS  Sharon Lam] -

 

(1)要点中国で米アップルの人気が低下している。調査会社カウンターポイントによると、今年第1─6週のiPhone販売は前年比24%減少し、ライバルの華為技術(ファーウェイ)の販売が64%増えた。

 

(2)中国の消費者需要は低迷しているとみられ、アップルをはじめとする米国企業は熾烈な価格競争で利益を圧迫されている。

だが、消費者の嗜好(しこう)の変化を踏まえると、米国企業を取り巻く状況は一段と悪化しそうだ。

 

(3)(調査会社カウンターポイント)

アップルは価格面でさまざまなブランドから攻勢を受けており、1月にはiPhoneの値下げという異例の措置に踏み切った。

これは米電気自動車(EV)大手テスラの苦境をほうふつとさせる。テスラは中国で値下げを繰り返しているが、国内EV大手、比亜迪(BYD)に引き離されている。

 

 

 

(4)問題は消費者需要の低迷だけではなく、中国産ブランドを選ぶ消費者が増えている。これは自動車やスマートフォンだけにとどまらない。

 

 

(コンサルティング会社マッキンゼー)

 中国のアパレルブランドは2013─21年に市場シェアを10ポイント近く拡大。海外ブランドより国産ブランドを好む消費者の比率は16─22年に2倍近くに上昇した。

 

(5)「国内ブランドの方が「質が高い」」

国産ブランドを選ぶ理由はお金の節約だけではない。

(マッキンゼーの調査)

中国の消費者の半数近くが海外ブランドより国内ブランドの方が「質が高い」と考えており、海外ブランドの方が質が高いとの回答は23%だった。

 

(6)「中国消費が回復しても米国ブランドの人気はもう戻らない」

スポーツ用品大手の安踏体育用品やカフェチェーン大手の瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)は、中国ではすでに誰でも知るブランドだ。ラッキン・コーヒーの国内店舗数はライバルの米スターバックスの中国店舗数の2倍を超えている。

中国の消費はいずれ回復し、支出が再開するだろうが、米国ブランドの人気はもう戻らないかもしれない。

 

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)