給食費や保育料、広がる無償化 自治体が子育て世帯の負担軽減 若年層移住も後押し(24年3月7日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)要点

人口減少のペースを抑えようと自治体が2024年度から新たな対策に乗り出す。

給食費や保育料、授業料など無償化の対象を広げ、子育て世帯の負担を減らす。若年層や外国人の移住も促進する。

人口減対策には継続的な取り組みが欠かせず、安定財源の確保も課題となる。

 

 

 

(2)青森県「県内すべての小中学校の給食費を10月から無償化」

 県内すべての小中学校の給食費を10月から無償化する。

24年度予算案に19億円の関連費用を計上した。都道府県単位で無償化に踏み切るのは全国で初めてだという。

子育て世帯の負担軽減策として希望する声が多く、無償化を決めた。

(宮下宗一郎知事)

 給食の無償化で「子育て世帯の負担が軽減し、可処分所得が増えれば所得向上の効果がある」と指摘する。家計に余裕が生まれ、出生率の上昇につながると期待を寄せる。

 

(3)長野県、富山県、山口県、東京都

長野県

 3歳未満の子どもについて第3子以降の保育料を無償化し、第2子は半額とする方針だ。

富山県や山口県

 保育料無償化の対象を広げる。

東京都

 24年度から高校授業料を実質無償化する東京都は「教育にかかる経済的負担を、子供を諦める要因にしてはならない」(小池百合子知事)と強調する。

 

(4)人口動向

(厚生労働省の人口動態統計)

23年の出生数は前年比で5.1%減少し、過去最少となった。

(厚労省の国立社会保障・人口問題研究所)

 日本全体の人口が50年には足元から17%減る見通しを示す。東京も40年をピークに減少し、すべての自治体にとって人口減対策は急務だ。

政府は24年度からの3年間で少子化対策に集中して取り組む。地方も関連施策を充実させ、少子化に歯止めをかけようと知恵を絞る。

 

(5)高知県

30年後に人口が35%減る見通しの高知県は市町村向けに10億円の交付金を新設し、若年人口の増加や出生率上昇につながる施策を支援する。

(浜田省司知事)

 「ギアを大きく上げなければならない。市町村はラストチャンスと思って挑戦してほしい」と話す。

 

(6)岩手県

 人口の自然減、社会減両面の対策費として221億円を計上し、23年度に比べて4億円積み増した。

子どもの遊び場整備にかかる費用の半額を市町村に補助する。

若年層の移住促進を目指し、県外の大学生や若手社会人を対象にした「お試し就業」の試みを始める。

 

(7)山形県

人口減少は働き手の不足につながり、地域経済の衰退を招きかねない。

 人手不足対策の一環として、外国人が就労しやすい環境整備を進める。外国人材を登用したい企業向けの支援窓口を設けるほか、外国人が暮らしやすい生活空間の整備を後押しする。

 

(8)「多くの地域で法人関係の税収が増加し新規事業の拡充を後押し」

 日本経済新聞の集計によると、都道府県の24年度の税収見通しは21兆4494億円と23年度当初に比べて0.8%増える。

多くの地域で法人関係の税収が増加し、福井など12都県は過去最高となる見込みだ。税収の堅調さも人口減対策など新規事業の拡充を後押しする。

 

(9)

足元の税収は堅調な半面、給食費や高校授業料、保育料の無償化をはじめ人口減対策には恒久的な財源が必要になる。

金利上昇で今後は公債費が増える可能性もあり、財政健全化への目配りも欠かせない。