トランプ氏返り咲きは総じて日本株にポジティブ-市場関係者の見方(24年3月5日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)
記事の概要
(1)要点
- アメリカファーストで米景気と日本株にプラス-いちよしAM秋野氏
- ドル高・株高圧力、利下げを迫る可能性も-三菱UFJ銀の井野氏
(2)「ドル高を通じて日本株にとっては総じてポジティブに作用」
(3)「トラ再選なら、インフレ圧力が強まるが、中長期的には金利上昇でドル高・円安」
(4)「自動車株には好材料、半導体株にはリスク」
市場関係者
<アメリカファーストと株高>
Aさん)減税・関税・移民排除の3点セットで労働市場が逼迫、インフレ。長期金利は上がるはずで、ドル高圧力は高まる。
Bさん)アメリカファーストとなれば、米国株上昇につられて日本株にもプラスの影響。
<ドル高の見方>
Cさん)米当局の利下げの見通しに狂いが生じる可能性があり、ドルの高止まりという可能性も。
Dさん)関税の引き上げも株価上昇に寄与し、総じて米経済にとって決してネガティブではない。
<ドル安の見方>
Eさん)対中政策で強硬な姿勢を示せば、株価にはネガティブで、投資家はリスクアセットを落とす方向に。
Fさん)利下げ強行で、円高を通じて日本にマイナスだ。対中強硬策を展開する中で、日本も半導体を中心に輸出するなと言われかねない。
<国債・金利>
Gさん)短期的には米当局に利下げ圧力をかけるが長期的にはまた上がるだろう。
Hさん)関税を諸外国に対して課すことで、米国内投資の増加と価格上昇でインフレ圧力が増す。
<その他>
Iさん)本番近づくと、ドル資産から他への逃避が静かに始まっていくのかもしれない。
記事(エディ・ダン)
(1)要点
- アメリカファーストで米景気と日本株にプラス-いちよしAM秋野氏
- ドル高・株高圧力、利下げを迫る可能性も-三菱UFJ銀の井野氏
(2)「ドル高を通じて日本株にとっては総じてポジティブに作用」
トランプ前大統領が2024年の米大統領選挙で再選すれば、ドル高を通じて日本株にとっては総じてポジティブに作用するとの見方が広がっている。
リンク 米最高裁、トランプ氏の大統領選出馬認める-コロラドの判断覆す
(3)「トラ再選なら、インフレ圧力が強まるが、中長期的には金利上昇でドル高・円安」
トランプ氏再選のシナリオでは
拡張的財政、
関税引き上げ
などにより、インフレ圧力が強まると市場関係者はみている。
短期的には 短期金利に低下圧力、
しかし、
中長期金利には 金利上昇圧力でドル高・円安となり、日本株に追い風となりそうだ。
(4)「自動車株には好材料、半導体株にはリスク」
トランプ氏の電気自動車(EV)敵視から自動車株には好材料の可能性がある一方、アメリカファースト主義の下で防衛関連銘柄ともいえる半導体株にとってはリスクになる可能性がある。
景気や議会のねじれ次第で、日本株にとってマイナスな円高・ドル安へ進むリスクも含み、バイデン氏の再選シナリオと比較すると依然としてボラティリティーを高めるのは間違いなさそうだ。
<アメリカファーストと株高>
(いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役)
総じて市場にとってポジティブだろう。
1)アメリカファーストに傾くことは確実で、米景気上昇の観点から、リンクが強い日本経済・日本株にとっては若干プラス。
2)減税・関税・移民排除の3点セットで労働市場が逼迫(ひっぱく)、インフレとなり、米当局が利上げせずとも長期金利は上がるはずで、ドル高圧力は高まるだろう。
不確実性は16年よりは低いが、依然としてバイデン氏よりは高く、選挙直前までは調整だろうが、来年以降は日本株は上昇するだろう。
(アセットマネジメントOneの中野貴比呂ストラテジスト)
アメリカファーストとなれば、米国株上昇につられて日本株にもプラスの影響だろう。
既に上昇傾向にあるが、さらに日本へ防衛費増額圧力を増してくるだろうから、防衛関連産業株が買われるだろう。
半導体に関しては、米中の緊張がさらに高まったとしても、日本が製造面で中国の代替となることは考えにくく、半導体セクターへのプラスの影響は限定的だろう。
<ドル高の見方>
(マーケット・リスク・アドバイザリーの深谷幸司フェロー)
インフレ・ドル高の圧力になる可能性がある。
関税などのコストアップ要因に加え、国内の政策は拡張路線で、国際情勢では中東などに関与しない姿勢から資源価格を通じてもインフレ圧力となる。
そうすると米当局の利下げの見通しに狂いが生じる可能性があり、ドルの高止まりという可能性がある。ただ、リスクオフになり、不安定な状態になる可能性もあり、そうなると、円がサポートされるケースもあるだろう。
(三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリスト)
ドル高・株高の圧力がかかるだろう。強烈に利下げを迫る可能性もある。
減税によって、中長期金利が上がり、短期金利が下がることでイールドカーブ全体としては逆イールドが正常化に動く可能性もある。
関税の引き上げも株価上昇に寄与し、総じて米経済にとって決してネガティブではない。
ここ2、3年続いてきた金融政策相場というテーマが、政治主導の相場に変わっていくきっかけになるだろう。
<ドル安の見方>
(岡三証券の長谷川直也債券シニアストラテジスト)
株価への影響は不透明感が強く、市場のボラティリティーは高まりやすい。
景気状況次第ではあるが、志向としては金利は低い方が良く、ドルは安い方が良いというのはあるだろう。
議会のねじれ次第で、実行力が決まるだろう。
対中政策で強硬な姿勢を示せば、株価にはネガティブとなるだろうから、投資家はリスクアセットを落とす方向ではないか。
(野村アセットマネジメントの石黒英之シニア・ストラテジスト)
保護主義はドル安圧力、FRBには利下げを迫り、日本株には円高を通じてマイナスだ。
対中強硬策を展開する中で、日本も半導体を中心に輸出するなと言われかねず、日本株高をけん引してきた半導体関連株に影響が出る可能性がある。
半導体関連銘柄の寄与度が高い日経平均株価の潮目が変わるリスクをはらんでいる。
<国債・金利>
(第一生命経済研究所の藤代宏一シニアエコノミスト)
一番影響されそうなのは金利で、米国債に関してはツイストスティープ化していくだろう。任期中は過激な景気刺激策を行いそうで、短期的には米当局に利下げ圧力をかけるが長期的にはまた上がるだろうと思う。
8年前に比べると政策不透明感は比較的小さく、日本に対しての態度も軟化した上にEV敵視から日本の自動車銘柄にとっては追い風になりそうだ。
(インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジスト)
短期的には成長率は高めとなり、景気にプラス、拡張的財政で株高、赤字も国債の発行も増え、長期金利には上昇圧力だろう。
再選となれば上院下院ともにオール共和となる見込みで、減税策をはじめとして積極的な財政政策がとられるだろう。
関税を諸外国に対して課すことで、米国内投資の増加と価格上昇でインフレ圧力、債券利回りは下がらないだろう。
<その他>
(野村証券の松沢中チーフストラテジスト)
トランプ氏の再選は「もしトラ」ではなく「ほぼトラ」だ。
テールリスクではなくむしろ現時点でのメインシナリオとも言える。
米大統領選が佳境に入るのに伴い、ドル資産から他への逃避が静かに始まっているのかもしれない。
ただし今のところ円は受け皿となっておらず軟調なままだ。
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