アメリカでEV販売失速、トヨタのHVがテスラのEVを逆転…値段手頃で燃費いいHVが見直される(24年3月4日 読売新聞オンライン無料版)
記事【ニューヨーク=小林泰裕】
(1)要点「EV失速、HV見直され」
米市場で電気自動車(EV)の販売が失速している。インフレ(物価上昇)や金利上昇で高額なEVを購入する負担が増す中、値段が手頃で燃費のいいハイブリッド車(HV)が見直されており、メーカーの戦略にも影響を及ぼしている。
「安心して遠出」
写真 トヨタの販売店ではHVが人気を集めている(2月23日、米ニューヨーク市で)=小林泰裕撮影
(2)「近いうちに、販売台数のほとんどがHVになるだろう」NYの販売店
2月下旬、ニューヨーク・マンハッタンの自動車販売店を訪れたエベニザー・オーラさん(38)は「HVなら安心して遠出できるし、燃料代も節約できる。次に買うならHVだ」と展示車両に目をこらしていた。
販売店のジョン・アイアコーノ社長によると、HVの販売は、この1年で約3割増えた。「近いうちに、販売台数のほとんどがHVになるだろう」と話す。
(3)「昨年末はトヨタHV49%増、テスラEV20%増」
英調査会社JATOによると、米国では2023年4~6月期以降、3四半期連続でHVの販売台数がEVを上回った。23年10~12月には、トヨタ自動車の米国でのHVの販売台数が前年同期比49%増の約18万台と過去最多となり、20%増の約17万台だった米テスラのEVを逆転している。
ホンダのHVも約4倍の約8万台と急伸した。
インフラ不安
(4)「HVの価格はEVより3割安い」
米メディアによると、米国でのEVの平均価格(23年)は約5万9000ドルなのに対し、HVは約4万2000ドルと3割ほど安い。
米政府は23年、EV購入者に最大7500ドルの税額控除を導入したが、それでもEVの方が割高だ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げで自動車ローンの金利も上昇している。
(5)「充電設備不足、寒さに弱い」
内陸部などでは充電設備が少ないことも失速の要因とみられる。蓄電池は寒さに弱く、冬場に性能が低下しやすいことも消費者の不安につながっている。
米調査会社アイシーカーズは「充電設備や価格の問題を解消しない限り、米国でEV販売を伸ばすのは難しいだろう」と指摘する。
(6)「GMはEV撤退PHVに注力、アップルもEV開発中止、ベンツも計画撤回」
テスラも、24年のEV販売の伸び率は23年(38%増)を大幅に下回るとの見通しを示している。
市場の変化を受け、米ゼネラル・モーターズはEVの生産目標を撤回した。今後はプラグインハイブリッド車(PHV)の生産に注力する方針だ。
米アップルも2月、10年がかりで進めてきたEVの開発を中止したと報じられた。
独メルセデス・ベンツも、30年までに販売する新車をすべてEVにする計画を撤回した。韓国・現代自動車はHVの生産を強化し、高級車ブランドにHVを投入する方針と報じられている。