29日 米MSCI、世界株指数を再構成 投資マネー、中国からインドへ(24年2月25日 日本経済新聞電子版)

 

記事(ニューヨーク=竹内弘文)

 

写真 米MSCIは世界株指数「ACWI」の定期見直しで中国企業66銘柄を除外する=ロイター

 

(1)(株価指数を算出する米MSCI)

29日、世界主要国の上場株を対象とした世界株指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」から中国株66銘柄を除外する。

四半期ごとの指数見直しの一環で、指数全体の中国株組み入れ比率も低下する。

代わりに比率が上昇するのがインドだ。中国からインドへ機関投資家の資金シフトが一段と加速する可能性がある。

 

(2)「ACWI」

国・地域別の47指数から成り、先進国や新興国の上場株を幅広く組み入れている。

47指数のうち4割強が昨年来高値の水準にあり、米国やインドなど最高値の更新も相次いでいる。

国・地域別指数を束ねたACWIは世界全体の株価動向を映すものとして投資家の注目度は高い。

 

(3)「ACWIに連動する投資信託」

ACWIに連動する投資信託には日本の個人マネーも流入する。

新NISAが始まった1月以降、三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は同制度を利用した投信販売ランキングの上位を維持している。

 

(4)「除外する中国銘柄」

今回のACWI見直しでは101銘柄が除外される。このうち中国株が66銘柄を占める。MSCIによると、中国企業の除外銘柄数としては少なくとも直近4年間で最多だ。

一方、新たに中国株5銘柄が加わり、中国株の組み入れ数は従来の765銘柄から704銘柄へと減る。

長引く不動産不況を映して、金地集団や緑城中国といった不動産開発事業者の株式が指数から外れる。

石油化学の中国石化上海石油化工、航空大手の中国南方航空、オンライン診療の平安健康医療科技なども除外される。

 

(5)「中国株を離れたマネーはインド」

MSCIの指数に連動してグローバル株式の資産配分をしている投資家は多いため、指数見直しは投資マネーの動きに直結しやすい。

(みずほ証券の分析)

 ACWIの中国本土株組み入れ比率は従来の2.49%から約0.02%低下し2.47%となる。指数連動型の運用をする投資家(パッシブ投資家)の機械的な中国株売りは11億6260万ドル(約1750億円)相当生じると、チーフクオンツアナリストの永吉勇人氏は推計する。

中国株を離れたマネーの主な受け皿となるのがインドだ。

大手銀のパンジャブ・ナショナル銀行やユニオン・バンク・オブ・インディア、重電メーカーのバーラト重電など5銘柄が新規採用となり、インド株組み入れ数は従来の131銘柄から136銘柄へと増える。

組み入れ比率も1.77%から1.81%へと向上し、みずほ証券の推計では13億6460万ドル相当の機械的なインド株買い需要が発生するという。

 

(6)インド

人口が中国を上回り世界一となったインドは内需拡大やインフラ投資の加速といった追い風が多く、株価の上昇基調が続いていた。

インド国立証券取引所は上場銘柄の時価総額で香港証券取引所と深圳証券取引所を上回った。機械的な中国株売り・インド株買いの動きはこうした流れに拍車をかける可能性がある。

 

(7)日本株

日本株は今回のACWI見直しで、SCREENホールディングスの1銘柄が新規採用される。一方、東ソーやコーエーテクモホールディングス、王子ホールディングス、住友化学など8銘柄が除外となる。採用銘柄数は225から218に減る。

もっとも、時価総額が大きいスクリンの組み入れ比率が比較的大きいなどの理由で、みずほ証券によると日本株の組み入れ比率は微増の5.41%と銘柄数が減っても上昇する。

想定される資金流入は159億円程度という。

(ニューヨーク=竹内弘文)