サマーズ氏が警鐘、市場は無秩序リスク織り込み不足の恐れ(24年2月23日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)
記事の概要
(1)要点
- ポピュリスト政策がもたらす危険性強調、「非常に現実的なリスク」
- 米国の法の支配に対する広範な意味合いにも懸念示す-次期選挙で
(2)「グローバルな政治的・社会的混乱のリスクが過小評価されている」
(3)「世界は、無秩序や混乱とそれに伴う苦しみのリスクが高まる局面かもしれない」
(4)「混乱の潜在性と、それに対する市場の見方の希薄さを強調したい」
(5)「次の選挙では、法の支配が政党に左右されずに実践されるかどうかが問われる」
(6)「保護主義、モノや資本や人の自由な流れの制限などポピュリスト政策は危険だ」
(7)「ポピュリズムは、ほとんど常に経済のパフォーマンスに不利に働いた」
(8)「右派や左派のポピュリズムは経済や市場にダメージを与える」
(9)「市場はそのようなリスクを十分には織り込んでいない」
記事(Nazmul Ahasan)
(1)要点
- ポピュリスト政策がもたらす危険性強調、「非常に現実的なリスク」
- 米国の法の支配に対する広範な意味合いにも懸念示す-次期選挙で
(2)「グローバルな政治的・社会的混乱のリスクが過小評価されている」
(サマーズ元米財務長官)
22日、金融市場はポピュリスト政策や法の支配の潜在的な侵食から生じるグローバルな政治的・社会的混乱のリスクを過小評価しているとの見方を示した。
(3)「世界は、無秩序や混乱とそれに伴う苦しみのリスクが高まる局面かもしれない」(サマーズ氏)
マイアミで開かれた「FIIプライオリティー」会議で、「秩序が今後どのように展開していくのかという感覚が希薄になり、無秩序や混乱、それに伴う苦しみのリスクが高まる局面に世界は向かっているのかもしれない」と指摘。
「こうしたリスクが市場に十分に織り込まれているかは分からない」と述べた。
(4)「混乱の潜在性と、それに対する市場の見方の希薄さを強調したい」
こうした混乱を予測しているわけではなく、その潜在性とそれに対する市場の見方を強調しているだけだと説明。
近年、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘などで地政学的対立が深まる一方、米国では11月の大統領選を控えて国内政治の緊張が高まる可能性がある。
(5)「次の選挙では、法の支配が政党に左右されずに実践されるかどうかが問われる」
サマーズ氏はまた、次期選挙を踏まえ、米国における法の支配に対するより広範な意味合いにも懸念を示した。
「法の支配が政党に左右されない形で実践されるのはある種当然のことだ」とした上で、「それが次の選挙の文脈で問われてくる可能性があると私は考えている」と語った。
リンク トランプ氏返り咲きは危険、サマーズ氏が経済界に警告-前より過激に
(6)「保護主義、モノや資本や人の自由な流れの制限などポピュリスト政策は危険だ」
サマーズ氏は保護主義に加え、モノや資本、人の自由な流れに対する制限など、世界中のポピュリスト政策がもたらす危険性を強調し、これらを「非常に現実的なリスク」と呼んだ。
(7)「ポピュリズムは、ほとんど常に経済のパフォーマンスに不利に働いた」
「経済史の最も明確な教訓の一つは、10年にわたってポピュリズムはほとんど常に経済のパフォーマンスにとって不利に働いてきたということだ」と分析した。
(8)「右派や左派のポピュリズムは経済や市場にダメージを与える」
その上で「右派のポピュリズムであれ、左派のポピュリズムであれ、ポピュリズムは経済や市場にダメージを与える」と指摘した。
(9)「市場はそのようなリスクを十分には織り込んでいない」
サマーズ氏は、そのようなリスクについて「市場の方向性を評価する上で、今のところ織り込みが十分でないように思われる」と付け加えた。
原題:Summers Warns Markets May Be Underpricing the Risk of Disorder(抜粋)
■トランプ氏返り咲きは危険、サマーズ氏が経済界に警告-前より過激に(2024年1月6日 ブルームバーグ)
記事の概要
(1)要点
「これは恐らく第2次世界大戦後で最も重大な大統領選挙だ」
トランプ氏が勝利すれば「世界の安定性は大きく損なわれる」
(2)「トランプ氏の大統領返り咲きが意味する歴史的な危険性」
(3)「トランプ勝利なら契約と執行における基本的な正義と権利、企業・大学の自律性が脅かされる」
(4)「ポピュリスト的指導者は初期は良くても在任期間が長くなると最後は悪い結果が」
(5)「バイデン政権の政策には多くの懸念があるが、米国と経済界の枠組みを破壊していない」
(6)「トランプの前政権の補佐は共和党主流派的だったが、今回は全く違う人々が集まった」
(7)「トランプ勝利なら第2次大戦以後の米国が持っていた道徳的権威は喪失される」
記事(アンスティー・クリストファー)
(1)要点
- 「これは恐らく第2次世界大戦後で最も重大な大統領選挙だ」
- トランプ氏が勝利すれば「世界の安定性は大きく損なわれる」
(2)「トランプ氏の大統領返り咲きが意味する歴史的な危険性」
サマーズ元米財務長官
経済界のリーダーたちに対し、バイデン政権の進歩的な政策の行き過ぎに対する懸念を脇に置き、ドナルド・トランプ氏が大統領に返り咲くことの歴史的な危険性を認識するよう呼びかけた。
(3)「トランプ勝利なら契約と執行における基本的な正義と権利、企業・大学の自律性が脅かされる」
サマーズ氏
「これは恐らく第2次世界大戦後で最も重大な大統領選挙だ」と発言。
11月にトランプ氏が勝利した場合、脅かされることになるのは「米国内で契約を締結し、執行する能力を含む基本的な正義と権利に関する見通し」と、企業や大学、その他の機関が「自律的に機能する」能力だと述べた。
ハーバード大学教授の同氏はブルームバーグテレビジョンに定期的に出演する。
(4)「ポピュリスト的指導者は初期は良くても在任期間が長くなると最後は悪い結果が」
トランプ大統領の1期目は金融市場こそ好調に推移したが、ポピュリスト的指導者の在任期間が長くなるにつれて状況が変化することを歴史が示しているとサマーズ氏は指摘。
イタリアのムッソリーニ政権の最初の数年間も、アルゼンチンのペロン政権も市場は好反応を示したが、どちらも「大暴落」で終わったとしている。
(5)「バイデン政権の政策には多くの懸念があるが、米国と経済界の枠組みを破壊していない」
サマーズ氏
「バイデン政権の過度に進歩的で、過度に政府介入主義的な政策に対する懸念は多くのケースで理解できる。しかし、それは米国とその経済界が私たちの生涯を通じて営んできた枠組みを根底から覆すこととはまったく異なる」と語った。
(6)「トランプの前政権の補佐は共和党主流派的だったが、今回は全く違う人々が集まった」
サマーズ氏は2017-21年のトランプ政権と、今年の選挙で勝利した場合のトランプ氏の違いを説明。
前政権のアドバイザーはムニューシン元財務長官ら共和党の「主流派から集められた」が、今回のトランプ氏は「過激なレトリック 」を駆使しており、「エスタブリッシュメントを打ち壊すことにコミットした人物」に囲まれていると述べた。
(7)「トランプ勝利なら第2次大戦以後の米国が持っていた道徳的権威は喪失される」
サマーズ氏はトランプ氏が勝利すれば「冷戦に勝利して以来、第2次世界大戦に勝利して以来、米国が持っていた道徳的権威の喪失を意味する。そうなれば、世界の安定性は大きく損なわれるだろう」と話した。
原題:Summers Urges CEOs to Reject Trump in Most Vital Vote Since WWII(抜粋)