[New門]「何にだってなれる」…発売65周年の「バービー」、女性を取り巻く社会の変化映す(24年2月10日 読売新聞オンライン無料版)

 

記事

 

(1)要点

世界で最も有名な着せ替え人形「バービー」が今年、発売から65周年を迎える。

昨年夏に公開された実写版映画は、世界で同年最大のヒット作になり、社会現象を巻き起こした。これまでのバービーは女性を取り巻く社会の変化を映す鏡といえる。

 

流行のファッションに大人の容姿

 

 

(2)「1959年3月9日、米ニューヨークでデビュー」

米国の玩具メーカー「マテル」が販売するバービーは1959年3月9日、米ニューヨークのおもちゃフェアでデビューした。

以来、世界150か国以上で10億体以上が売られている。熱心な大人のコレクターもおり、幅広い世代を魅了している。

 

(3)発売当時、米国で人形と言えば、ままごと用の赤ちゃん人形が主流。

(創業者の一人、ルース・ハンドラー)

女の子が自分の将来を投影できるような人形の必要性を感じ、自分の娘が遊んでいた着せ替えの紙人形と、ヨーロッパで見つけた人形をヒントにバービーを開発した。

 

(4)「セクシーすぎると、保護者ら批判」

ブロンドの髪に流し目、スレンダーな体形。身につけるのは最先端のファッションだ。大人の容姿を持つ人形は画期的だった。保護者らから「セクシーすぎる」などの批判を浴びたが、子どもの絶大な支持を得た。

 

(5)「日本での発売は62年。67年にはタカラトミーのリカちゃん登場」

バービーの大ヒットで世界で同様の人形が作られた。日本でタカラ(現タカラトミー)が「リカちゃん」を発売したのは67年のことだ。

(子ども文化とジェンダーに詳しい小田原短期大特任准教授の宮下美砂子さん)

「バービーは単なるかわいい人形ではなく、時代を映し、時には時代を先取りしてきた」と指摘する。

 

様々な職業「何にだってなれる」

 

(6)女性が自分名義の銀行口座を開設できなかった62年、バービーは初めて家を購入する。人類が月面着陸する4年前の65年には宇宙飛行士に 扮(ふん) した。

(宮下さん)

81年に国連の「女子差別撤廃条約」が発効

 80年代以降、男女平等の観点が職業に強く反映されるようになったという。

85年発売のバービーは最高経営責任者(CEO)

 ピンクのスーツで役員会議に出席し、夜はジャケットを脱いでドレス姿で街へ出かける。

92年以降、大統領選に立候補したバービーも複数回作られた。

 

(7)バービーが一貫して発信しているメッセージは「You can be anything.(何にだってなれる)」。

旧来の枠組みを脱し、「性別を理由に夢を諦めないで」と訴えた。これまでに就いた職業は実に250以上に上る。

 

民族も体形も

 

(8)「白人中心の美の基準だ、非現実的な体形が子どもの摂食障害リスク」

多様性の観点からはしばしば批判の対象になった。代表的なのは「白人中心の美の基準を押しつけている」「非現実的な体形が子どもの摂食障害リスクを高めている」といった意見だ。

80年

 アフリカ系やヒスパニック系のバービーが登場し、多様な民族を表現。

2016年

 3種類の体形(高身長、ふくよか、小柄)が追加され、様々な肌や目の色、ヘアスタイルのバービーも用意された。

近年

 車いすや義足のバービーも加わり、社会の多様性を表現する動きをさらに推し進める。

 

(9)「ダウン症のバービーに賛否両論」

2023年11月

 日本でダウン症のバービーが発売された。賛否両論を呼んだ。

「当事者からは自分の姿が反映され、社会の一員として認められたという声も寄せられた」とマテル・インターナショナルのブランドマネジャー、万沢美恵さんは話す。

(以下有料記事)