AIの政府機関、安全基準作成へ 所長内定の村上氏(24年2月9日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)人工知能(AI)の安全性を検証する政府機関の初代所長に内定した村上明子・損害保険ジャパンCDO(最高デジタル責任者)は8日、都内で「経済活動においてAIを安心して活用できるよう支えたい」と述べた。

同機関は近く発足し、AIの安全性を評価する基準づくりに取り組む。

 

(2)14日にも経済産業省傘下の独立行政法人に「AIセーフティ・インスティテュート(AISI)」を設置する。村上氏は8日、斎藤健経産相や高市早苗科学技術相、松本剛明総務相と面会した。

AISIは生成AIの悪用リスクや企業が安全なAIを開発するための手法などを検証する。AIの犯罪利用の防止につなげる。

 

(3)村上氏は損保ジャパンで社内での生成AIの利活用や、AIのリスク管理などに携わってきた。日本アイ・ビー・エム時代にはAIの「Watson(ワトソン)」の開発に従事した経験をもつ。

 

■AI安全機関所長に村上明子・損保ジャパンCDO…IBMで「ワトソン」開発に従事(24年1月31日 読売新聞オンライン無料版)

 

 政府は人工知能(AI)の安全性確保のため近く新設する「AIセーフティー・インスティテュート」の所長に、AIの専門家で損害保険ジャパンCDO(最高デジタル責任者)の村上明子氏(50)を充てる方針を固めた。

 

 村上氏は日本IBMの研究所でAI「ワトソン」の開発に携わった。2021年に入社した損保ジャパンでは業務へのAI活用などを主導してきた。AI関連の学会で役員を務めるなど経験が豊富で、産学官の専門家が集まる組織を束ねられると判断した。

 

 新機関は、AIを開発する企業が安全性を評価するのに使う基準の策定などを担うほか、偽情報対策に役立つ技術などの調査や研究も手がける。内閣府や経済産業省、総務省などの職員が参加するほか、政府系研究機関や企業、大学から数十人が所属する見通しだ。

 

■損保ジャパン 村上明子が取り組む「人材を生かすためのDX」(Japan innovation Review  DXのその先へ)

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70944?page=2

 

DX推進部を部門間のハブ的存在に

 

要点

(5)私はもともとエンジニアでしたが、一番のスキルは“学ぶことができる”こと。

最先端の技術というのは1年後には陳腐化して役に立たなくなってしまう。

エンジニアやリサーチャーにとって一番大事なのは、学び続ける能力だと思っています。

エンジニアと同じとまではいかなくても、学ぶことが習慣になる土壌ができ、社員みんなが学び続けていけることができたら、ある意味でのゴールかなと思います。

(4)人材育成において、社員を3つのグループに分けて考えています。

「第1のグループ」(モノ作って分析できる、データ活用やプロトタイプの作成)

  モノを作っている、あるいは自分で分析ができるような専門職の人です。

  少数ながらデータの利活用やプロトタイプの作成をきちんとやりきれる人材が本部に必要です。

「第2のグループ」

  その周りに必要なのが、デジタルを企画できる人材。

  “ビジネスプロセスが変革して仕事がやりやすくなる”“お客さまに新しい体験価値が提供できる”など企画を提案できる人材。

「第3のグループ」

  社員全員。

  デジタル施策を理解した上で、各職場で活用や改善提言が実施できるできる人材となってもらいたい。

 

社員のなかで学びたいと思った人がきちんと学べるような環境を整えるという取り組みを、草の根で進めていくイメージですね。

 

 

 

 

記事(林 桃) 2022.7.20

 

一番大事なのは学び続ける能力

 

(1)序

「安心・安全・健康」を軸に、さまざまな社会問題に向き合ってきたSOMPOホールディングス。2021年4月にSOMPOグループの中核会社である損害保険ジャパンへDX推進部を設立し、DXへの取り組みも本格化している。同じタイミングで、外部企業より損保ジャパンにジョブチェンジしてきたのが村上明子氏だ。長くエンジニアとして研究職に従事しながら、企業のDX支援の経験も豊富で、現在は執行役員CDO DX推進部長を担う村上氏に、損保ジャパンのDXの取り組みについて聞いた。

 

(2)――損保ジャパンがDXに取り組んだきっかけを教えてください。

 

村上 2016年に楢﨑(浩一 現SOMPOホールディングス デジタル事業オーナー執行役専務)がSOMPOホールディングスに入社し、グループCDO執行役員に就任したことが大きなきっかけとなりました。

その後、業務変革のみならず、新しい事業をデジタルで創造するための施策をSOMPOグループとして進めてきました。

 例えば、

新しいデジタル技術に対してProof of Concept(PoC)といわれる実証実験を行った後、実際にそれを現場で使えるようにしようとした際、当社は金融機関としてお客さまの大事なデータをお預かりしていますので、いろいろな制約も出てきます。

そうしたギャップに対し、きちんとデジタルの活用を考え、PoCから実装・運用までを一気通貫で対応していこうとなったことも、個社としてデジタル施策に本腰を入れるようになったきっかけの1つだと思います。

 

(3)――DX推進のステップについて教えてください。

 

村上 私は、やはり基本は“人”だと考えています。

デジタルを使うのも企画をするのも人ですので、まずは人の教育や人材育成、風土改革を最初の

 1)ステップ「DX1.0」、

 2)「DX2.0」が業務変革、

 3)「DX3.0」が事業やビジネスの変革

と位置付けています。

ただ、スピード感も大切ですので、ステップごとに順番に取り組んでいくのではなく、全体を組み合わせながら加速的に進めていくのが理想的です。

 

(4)――最初のステップとして挙げられた「人材」は、他の企業も苦労しているところかと思います。

 

村上 恐らくデジタル化が大変というよりは、今のやり方を変えたくないと思う方が多いのだと思います。

ですので、変化を受け入れられる土壌をきちんと作っていくことが大事なのですよね。

人材育成において、社員を3つのグループに分けて考えています。

 

「第1のグループ」

  モノを作っている、あるいは自分で分析ができるような専門職の人です。

  少数ながら、データの利活用やプロトタイプの作成といった場面できちんとやりきれる人材がDX推進部の中に必要です。

 

「第2のグループ」

  その周りに必要なのが、デジタルを企画できる人材。

  例えば、“こういうやり方をしたらビジネスプロセスが変革して、仕事がやりやすくなるのではないか”“お客さまに新しい体験価値が提供できるのではないか”といった企画を提案できる人材ですね。これが、本社を中心に数百人程度必要だと考えています。

 

「第3のグループ」

  社員全員。営業部門や保険金サービス部門、コールセンターのようなお客さまと直接触れ合う部門の他に、保険商品やオペレーションを作っていくような部門など、当社にはさまざまな部門がありますが、それぞれがデジタル施策を理解した上で、各職場で活用や改善提言が実施できるようにしていく。

全社員にそれができる人材となってもらいたい。

 約2万3000人の社員に一気に研修を行ってリスキリングするといったことではなく、学びたいと思った人がきちんと学べるような環境を整えるという取り組みを、草の根で進めていくイメージですね。

 

(5)――以前、「JDIR」の記事内で「SOMPOホールディングスは、なぜ全社員をDX人材にしようと思ったのか」というテーマでお話しいただきました。現時点で手応えは感じていますか。

 

村上 人材育成に関しては、ゴールはないと思っています。

私はもともとエンジニアでしたが、一番のスキルは“学ぶことができる”ことだと自負しています。学ぶことができなければ、どれだけ現時点のスキルが素晴らしくても、最先端の技術というのは1年後には陳腐化して役に立たなくなってしまう。

エンジニアやリサーチャーにとって一番大事なのは、学び続ける能力だと思っています。

エンジニアと同じとまではいかなくても、学ぶことが習慣になる土壌ができ、社員みんなが学び続けていけることができたら、ある意味でのゴールかなと思います。

(以下会員記事)