「ポスト岸田」非派閥で基盤づくり探る 保守派、高市氏と会合/石破氏は勉強会を再開(24年2月9日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)自民党内で今秋の総裁選に向けて派閥によらない支持基盤づくりの動きが相次ぐ。

派閥の政治資金問題を受けて政策の方向性などを軸とする緩やかなグループが乱立する可能性がある。党首の選び方をどこまで刷新できるかの試金石となる。

 

写真 「保守団結の会」の勉強会であいさつする高市氏(8日、党本部)

 

(2)「保守団結の会」

党内の有志議員グループ「保守団結の会」は8日、高市早苗経済安全保障相を講師に招いて勉強会を開いた。

同会は代表世話人の高鳥修一氏をはじめ安倍派(清和政策研究会)に属していた議員が多い。

安倍晋三元首相を永久顧問として防衛力強化や憲法改正、積極財政などを中心に勉強会を重ねてきた。

次の総裁選で一致して推す「ポスト岸田」候補は定まっていない。

高市氏には「政治理念が近い」との期待があり、機密情報の保秘に関する講演を依頼した。代理出席を含めて20人超が講演に出席した。

 

(3)高市早苗経済安全保障相

総裁選出馬への意欲も隠さない。2023年11月には自らの勉強会「『日本のチカラ』研究会」を立ち上げた。

所属していた清和研を11年に退会した経緯から安倍派の幹部とは溝がある。

保守的な政策の方向性が一致する議員を引き寄せられれば基盤づくりにつながる。

 

(4)世論調査で「次の総裁にふさわしい」人の上位に入る石破茂元幹事長や河野太郎デジタル相の動向も注目点だ。

 

 

 

(5)石破氏

自身を中心とするグループ(旧石破派、水月会)の会合を定期的に開いている。

7日の会合では政治資金規正法上の政治団体を解散すると決めた一方で、休眠していた政策勉強会は近く再開する。

 

(6)河野氏

派閥横断で開催してきた勉強会を継続する。党内基盤が弱い石破氏や、前回の総裁選で所属する麻生派(志公会)を一本化できなかった河野氏にとって派閥単位の総裁選でなくなることはプラスに働きうる。

 

(7)茂木敏充幹事長

派閥を前提にした戦略の練り直しを迫られるのが茂木敏充幹事長だ。

茂木派(平成研究会)を「政策集団」として事実上存続させて支持基盤を残す道を模索するものの、小渕優子選挙対策委員長ら退会者が相次ぐ。政策面での連携相手を探る。

 

(8)上川陽子外相

一方、自らの派閥の存続を明言する麻生太郎副総裁は戦略が異なる。

「新しいスターがそこそこ育ちつつある」。

麻生氏は1月、福岡県での講演で上川陽子外相を持ち上げた。これまで自身の麻生派と茂木派で岸田派(宏池会)の首相を支えてきた。計150人ほどの枠組みで安倍派に対抗する「三頭政治」は派閥解消で崩れた。

上川氏への称賛発言は総裁選にらみとの臆測を呼んだ。

麻生氏の周辺は「岸田政権を支えるのが原則だが、いざとなったら上川さんという思いがある」と解説する。

上川氏は紛争予防や平和構築の議論に女性の参加を促す「女性・平和・安全保障」(WPS)を自身のライフワークに据える。

15日には自身が会長を務めるWPSに関する議連が会議を開催する予定だ。

 

(9)野田聖子元総務相

21年の総裁選に出馬した無派閥の野田聖子元総務相は24年1月、岐阜市で開いた会合で再挑戦に意欲を示した。会合後、記者団に「派閥の支援がなければ総裁選に出られないという常識が変わった」と強調した。