能登地震で自身も被災、家もなく…看護師「辞めたい」続々(24年2月9日 読売新聞オンライン無料版)
写真 看護師の4分の1が退職を検討している輪島市立輪島病院(7日、石川県輪島市で)
記事
(1)要点
能登半島地震で大きな被害を受けた石川県奥能登地方の中核病院で、退職の意向を示す看護師が相次いでいる。
生活再建の見通しが立たないためで、輪島市、 珠洲市など4市町の4病院で計約70人が退職する見通しだ。
国による応援派遣に加え、県看護協会も勤務可能な看護師の募集を始めたが、患者の受け入れに影響が出る可能性もある。(鈴木経史)
患者受け入れ影響も
(2)輪島市立輪島病院
「地震発生から全力でやってきたが限界が近づいている」。輪島市立輪島病院の河崎国幸事務部長(54)は、こう打ち明ける。
県の災害拠点病院に指定されている同病院は、施設や機材に被害を受けながら、けが人や救助された人を受け入れてきた。
市内には被災したクリニックもあり、1月22日からは外来診療も再開している。
(3)「自宅が全半壊、避難所から通勤、生活拠点の見通しがない」
しかし、勤務する看護師らは自宅が全半壊するなどして生活拠点を失い、空き病棟で寝泊まりしたり、避難所から通勤したりする人も多い。
地震直後から「仮設住宅への入居見通しが立たない」「子供を抱えており働くことができない」などの声が上がり、約120人いる看護師のうち10人以上が退職届を提出し、15人以上が退職意向を示した。
(4)175床の病床がある同病院では、地震前には90人前後の患者を受け入れていた。
看護師が約30人減った場合、運用できる病床数は30~40床まで減少しそうだという。
地震直後に重篤な患者を金沢市などに移送し、現在の入院数は20人程度だが、河崎事務部長は「今後、新規の患者が増えれば対応しきれなくなる」と危機感を募らせる。
(5)珠洲市総合病院
126人のうち、約20人が3月末までに退職する見通しで、穴水町の公立穴水総合病院は約70人中、約10人が退職を検討。
(6)能登町の公立 宇出津(うしつ)総合病院
既に5人が退職し、さらに数人が辞める意向という。
ある病院の事務担当者は「奥能登は以前から看護師が不足していた。生活基盤が復旧しても、一度離れた看護師が戻ってきてくれるかは不透明」と心配する。
(7)「最低でも住まいを確保することが重要だ」県看護協会」
県看護協会は6日から、4病院に勤務できる看護師や助産師などの募集を始めた。
県外から看護師2人の応募があったという。
ただ、被災地では断水が続き、居住場所も確保できないため、すぐに派遣できるかは不明だ。
小藤幹恵会長は「生活拠点がなければ長く続けてもらうことはできない。最低でも住まいを確保することが重要だ」と述べた。
(8)(厚生労働省)
これまでに4病院に延べ1264人の看護師を派遣。
現在も45人が入院病棟の支援などに当たる。
同省看護課の担当者は「派遣を継続しながら、住環境の問題など様々な取り組みを進めていく必要がある」と話している。