月探査機「SLIM」計画の責任者 坂井真一郎氏 電気自動車の制御から宇宙へ(24年2月4日 日本経済新聞電子版)

 

記事(編集委員 小玉祥司)

 

 

 

(1)「ピンポイント着陸に関しては百点満点」。1月25日の会見でほほ笑みながら語った。

数キロメートル以上あって当たり前だった目標地点からの誤差を10メートル以内と飛躍的に向上させた技術は世界初で、これからの月開発に欠かせない。

 

(2)日本は07年に「かぐや(セレーネ)」で月を上空から詳細に観測して世界から注目された。

続く「セレーネB」で着陸を目指したが一旦断念。SLIMはピンポイント着陸に目標を絞り復活した「20年越しの計画」だった。セレーネB時代の研究者に中堅・若手が加わり「うまく融合して成果が出せた」と振り返る。

 

(3)大学院では電気自動車の制御に熱中し、宇宙に関心は無かった。

就職を考えていたころ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で若手中心にオーロラを観測する小型衛星を打ち上げる計画がスタート。誘われて制御などを担当したのが宇宙に関わるきっかけだった。

 

(4)着陸時に発電できなかった太陽光パネルも復活、科学探査も着実に進む。

着陸したクレーターの斜面は従来の探査機なら避けていた場所だ。降りられるところではなく降りたいところに降りるという目標を達成し「新しい扉を開いたと思う」。

(編集委員 小玉祥司)