専門学校→大学、編入しやすく 単位制に26年度移行 学び直し後押し(24年2月3日 日本経済新聞電子版)
記事
(1)要点
(文部科学省)
2026年度から専門学校の履修制度を大学と同じ単位制に移行を始める。大学に編入しやすくし、就職後のリカレント教育やリスキリングといった学び直しを後押しする。IT(情報技術)や医療福祉のような人手不足が深刻な分野で専門スキルを持つ人材を育てる。
学校教育法の改正案を今国会に提出する。
(2)「専門学校の授業を大学の単位認定に読み替え」
専門学校は実際の仕事につながる実践的な教育に主眼を置く。学校教育法に基づき1年間に必要な授業のコマ数を「800時間以上」と定める。これを大学向けの基準に沿って単位認定で評価する方法に改める。
卒業後に大学編入する場合、
専門学校が用意した履修コマ数を単位に換算した資料を学生側が大学に届け出る。大学側は資料などを基に編入資格の有無を確認する必要がある。双方の負担が大きく、編入の障壁になっている。
(3)文科省の調査によると、22年度に専門学校(専門課程)を卒業した人は23万1903人いた。専門学校を経て大学編入した人は1651人にとどまる。
写真 医療福祉などで専門スキルを持つ人材を育てる
(4)専門学校が単位制になれば、編入手続きを簡略化できる。
1)編入
4年制大学を2~3年で卒業できる場合があり、学生にとってメリットが大きい。専門学校にとっても卒業生の進路の選択肢が増え、入学者を集めやすくなる。
2)就職後の編入学
いったん就職した後にリスキリングやスキルアップを求めて再び大学に通うケースも想定する。
(5)「単位制のメリット」
1)授業や実習を受けた時間ではなく、知識・技能の習熟度で成果を評価するため教育の質の向上につながるとの期待もある。
2)専門学校から大学院への進学もしやすくする。
専門課程を終えた学生が専門学校でより高い水準の授業を受ける「専攻科」を制度として認める。
2年間の専門課程を修めた後、条件を満たした専攻科で2年学べば大学院に進学できるといった仕組みを検討する。
(6)「大学院進学の阻害」
1)大学院は大学卒業に相当する学力水準が要件となる。これまでは専門学校側の教育課程に一貫性がなく、大学院にとって学生が要件を満たすかを客観的に判断しにくかった。
2)いまも自主的に専攻科を設けている学校はあるものの、大学院の入学資格を確実に手に入れられる制度になっていない。制度化することで国がお墨付きを与えて、高度な学習の機会を求める人を支援する。
(7)「専門学校が自己点検や外部評価を導入する」
専門学校の教育の質を高めるため大学で取り入れているようなチェック機能も設ける。
教育活動や組織の運営、施設設備の状況を学校自身が評価し公開することを義務づける。業界団体や専門職団体など外部の有識者からの評価も受けるよう努力義務で求める。
(8)「専門学校は就職率が大卒を上回る」
文科省によると、22年に専門学校を卒業した人の82%がすぐ就職した。大学の学部卒の就職率(76%)と比べても高い。
医療福祉や自動車整備、観光など幅広い分野で即戦力となる専門職を育成する教育機関として定着している。21年度では4万人ほどの社会人が専門学校に入学している。
(9)少子化の影響で全国の専門学校は減少傾向にある。
23年は2693校で13年から118校減った。近年は毎年30校程度ずつ減少している。学生の募集を停止しているところも100校ほどある。
専門学校で学んだ人が大学や大学院に進みやすくなることで、卒業生や社会人が仕事に必要なより高度な知識を学んだり、最新の情報を身につけ直したりする機会を確保する。