違法太陽光149件、指導後も2割是正せず 森林無許可開発など 本社調査 買い取り保留不可欠(高橋耕平、兼松雄一郎、岡田江美)

 

要点

(4)「違反が長期に及ぶ背景は主に2つ」

 1)認定取り消しには「行政訴訟リスクを恐れ慎重になりすぎている」

 2)森林法違反で認定を取り消すには自治体の指導・命令などを起点。

   資源エネルギー庁が改善を命じ、従わない場合に聴聞を経て判断する手順を踏む。

   そもそも自治体の情報がエネ庁に届いていない。

 3)エネ庁に情報が共有されていたのは4割のみだった。

(6)一般的に自治体の森林担当部署は森林計画の運用が主な業務で、認定可否の関心は希薄。

 愛知県も林野庁に報告はしているが、林野庁は「エネ庁への報告は自治体の責任」(治山課)とする。

 

記事

 

(1)森林の無許可開発など法令違反の太陽光発電施設が固定価格買い取り制度(FIT)の認定を取り消されぬまま稼働し続ける例が相次ぐ。

森林法違反は少なくとも149カ所に上り2割が是正されていない。

行政の連携不足から情報が国に共有されないケースも多く、運用改善が不可欠だ。

 

 

 

(2)都道府県、経済産業省各拠点への情報公開請求で森林法違反に関する資料(2018~22年度)を日本経済新聞が調べた。

内訳

  1万平方メートル超の無許可開発が46カ所、

  防災設備不備など許可条件違反が86カ所、

  その他・不明が17カ所だった。

是正されない状態が続くのは、うち30カ所。

少なくとも23カ所は稼働状態だった。

9割が最初の行政指導・命令から1年超経過しており、指導・命令後3年超に限っても半数強の16カ所に上った。

 

(3)鹿児島県は出水市の開発事業者が同市内で山林を無許可開発したことに対し、14年以降2回、許可申請書の提出を求めて文書指導した。

申請書は現在も提出されておらず、9年稼働を続ける。

(県森づくり推進課)

 「十分な防災設備が備わっておらず調整池の設置計画などが必要」と説明する。

 開発事業者は「前社長の事業で詳細を把握していない。指導に従うべく準備中」と答えた。

 

(4)「違反が長期に及ぶ背景は主に2つ」

 1)認定取り消しが極めて重い意味を持つこと。

  「行政訴訟リスクを恐れ慎重になりすぎている」(神奈川大の幸田雅治教授)ことから、期限を明確に区切らず事業者の改善を待ち続ける。

 幸田教授は「法を厳格に運用し悪質な事案は迅速に取り消すべきだ」と指摘する。

 2)行政の情報共有が希薄なこと

  森林法違反で認定を取り消すには自治体の指導・命令などを起点に資源エネルギー庁が改善を命じ、従わない場合に聴聞を経て判断する手順を踏む。

  そもそも自治体の情報がエネ庁に届いていないケースが多い。

 3)エネ庁に情報が共有されていたのは4割のみだった。

  役所の縦割り構造などが影響し報告を怠るケースが後を絶たず、仕組みが形骸化している。

 

(5)(愛知県)

常滑市の保安林を無許可伐採した事業者に対し16年度から6回復旧計画の提出などを求め行政指導した。しかし報告せず、稼働が続く。

 

(6)一般的に自治体の森林担当部署は森林計画の運用が主な業務で、認定可否の関心は希薄になりがちとなる。

エネ庁との交流もほとんどない。

愛知県も林野庁に報告はしているが、林野庁は「エネ庁への報告は自治体の責任」(治山課)とする。

 

(7)FIT認定発電所の電力は国民の電気料金に上乗せする形で集めた賦課金を原資に、固定価格で買い取ることを国が保証する。

違反施設から買い取り続けることはFITの趣旨に反する。

24年度からはエネ庁の判断で是正までの期間、固定価格での買い取りを保留する新たな制度が始まる。

ただ手続きのハードルが下がっても、自治体からの情報共有がなければ実効性を欠く。

(高橋耕平、兼松雄一郎、岡田江美)