京アニ放火殺人に死刑判決 青葉真司被告は最後におじぎ(24年1月25日 newsYahoo! 京都新聞)

 

記事

 

(1)36人が死亡、32人が重軽傷を負った2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人など五つの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の判決公判が25日、京都地裁で開かれた。増田啓祐裁判長は求刑通り、青葉被告に死刑を言い渡した。

 

(2)増田裁判長は判決理由で「残虐非道な犯行。一瞬にして黒煙と炎に巻き込まれた被害者たちが抱いた恐怖、苦痛は計り知れない。被害者には何の落ち度もなく、その無念は察するに余りある」と述べた。

青葉被告は死刑の言い渡しが行われた後、増田裁判長から「被告人、よろしいですね」と問いかけられると、深くおじぎをした。

 

(3)「被告の刑事責任能力の有無や程度が争点」

起訴内容に争いはなく、青葉被告の刑事責任能力の有無や程度が争点となった。

(増田裁判長 判決理由)

「事件当時は心神喪失、心神耗弱のどちらの状態でもなかった」と青葉被告の刑事責任能力を認定。

被告には誇大な自尊心があり、うまくいかないことがあると攻撃的になると指摘し、ガソリンによる放火という犯行手段については「本人の考え方や知識に基づくもので、妄想の影響はほとんど認められない」と述べた。

 

(4)「弁護側は重度の妄想性障害主張」

これまでの公判で青葉被告は、京アニのコンクールに応募し落選した自身の小説について「(京アニに)アイデアを盗用された」と動機を説明。落選や盗用は「闇の人物」が指示したなどと訴えていた。 

検察側は「筋違いの恨みによる復讐(ふくしゅう)」と指摘。「日本の刑事裁判史上、突出して多い被害者数だ」として死刑を求刑。

一方、弁護側は精神疾患である重度の妄想性障害の影響で、心神喪失か心神耗弱の状態だったとして、無罪か刑の減軽を求めていた。 

 

 (5)事件では被告も全身に大やけどを負い、治療を経て20年5月に逮捕。

昨年9月から始まった裁判では終盤に事件への後悔や謝罪の言葉を述べ、極刑を受け入れる考えを示した。 

 

 (6)(起訴状)

青葉被告は19年7月18日午前10時半ごろ、京アニ第1スタジオの正面玄関から侵入し、ガソリンを社員に浴びせてライターで放火。建物を全焼させ、屋内にいた社員70人のうち36人を殺害、32人に重軽傷を負わせたなどとしている。 

 

■妄想性障害  MSDマニュアル

妄想性障害は,1カ月以上持続する誤った強い信念(妄想)の存在と,他の精神病症状を認めないことを特徴とする。

妄想性障害は既存の 妄想性パーソナリティ障害から生じることがある。妄想性パーソナリティ障害を持つ患者の場合は,他者や他者の動機に対する広範な不信感や疑い深さが成人期早期から始まり,生涯を通じて増大していく。

 

初期症状としては,他者から搾取されているという感覚,友人の誠実さまたは信頼に対するとらわれ,悪意のない発言または出来事の中に脅迫的な意味を読み取る傾向,恨みを抱き続けること,侮辱されたと思うとすぐに反応することなどがある。

 

妄想性障害の亜型についてはいくつかが認められている:

  • 被愛型:他者が自分を愛していると確信する。電話,手紙,監視,またはストーカー行為を手段として妄想の対象と接触しようとすることが多い。この亜型の患者は,この行動に関連して法律を犯す可能性がある。
  • 誇大型:自分は偉大な才能をもっている,または重大な発見をしたと確信する。
  • 嫉妬型:自分の配偶者または恋人が不貞を働いていると確信する。この妄想は,曖昧な証拠によって補強された誤った推論に基づいている。身体的暴行に訴えることがある。
  • 被害型:自分が陰謀の対象となっている,スパイされている,中傷されている,または嫌がらせを受けていると確信する。裁判所および他の政府系機関に訴えることで正当性を主張しようと繰り返し試みたり,想像上の被害に対する報復として暴力に訴えたりすることがある。
  • 身体型:身体的機能に関連する妄想で,例えば,身体に変形が生じている,臭いがする,または寄生虫がいると確信する。

 

患者の行動は,明らかに奇異または奇妙というわけではなく,妄想により生じうる帰結(例,社会的な孤立または偏見,結婚生活上または仕事上の問題)を除けば,患者の機能が著しく損なわれることはない。