地震の隆起で面積が1.3倍に 輪島市門前町黒島町、歴史的な船主集落が海から遠のく(24年1月20日 産経新聞オンライン無料版)

 

記事(西山 諒)

 

(1)能登半島地震による地盤の隆起によって、江戸時代の海運船「北前船」の船主集落で知られる石川県輪島市門前町黒島町の面積が約30%増えたことが20日、地理情報システム(GIS)を使った分析でわかった。

陸地の増加により、歴史的な集落は海から最大240メートル遠ざかった。

日本地理学会によると、能登半島の沿岸全体では約4.4平方キロの陸化が生じている。港が完全に陸上になった場所もあり、今後、生活基盤の再構築が求められる。

 

最大4メートルの隆起を確認

 

(2)国土地理院による観測衛星「だいち2号」のデータを用いた2.5次元解析によると、能登半島の北部では1メートルを超える隆起が広い範囲でみられた。特に輪島市西部では、暫定値で最大約4メートルの隆起が確認された。

 

リンク 動画 大規模な隆起が発生した石川県輪島市門前町黒島町(イメージ)

 

 

 

(3)日本地理学会の「令和6年能登半島地震変動地形調査グループ」は、国土地理院の地形図と発災後の空中写真を比較し、黒島地区で最大240メートルに及ぶ海岸線の前進が起きたと発表した。

 

 

調査グループが陸化したと判断したエリアについて、産経新聞が2020年の国勢調査のデータをもとにGISで分析したところ、黒島地区の面積は従来の0.88平方キロから1.14平方キロ(1月11日時点)へと約30%増えていた。

輪島市で最も狭い地区で、東京ドーム5.5個分の陸化が起きたことになる。

 

海運業で発展した「船主集落」

 

写真 重要文化財「旧角海家住宅」の発災前の姿。海のすぐ近くにあった=石川県ホームページより

 

(4)「旧角海(かどみ)家住宅」

輪島市門前町黒島町は、江戸時代に北前船による海運業の発展とともに栄え、現在は海沿いの船主集落が「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている。しかし能登半島地震によって海岸線の様子は一変した。

保存地区の北部にある重要文化財の「旧角海(かどみ)家住宅」は、海岸までの距離が約35メートルから約165メートルに伸びた。国土地理院が撮影した空中写真には、建物が崩れて道路を半分ほどふさいでいる様子も写っていた。

 

(5)黒島地区は2007年の能登半島地震でも大きな被害を受け、地区をあげて復興に取り組んできた。ただ今回の大地震は、再び被害をもたらしたうえ、歴史ある集落から臨む景色まで変えてしまった。

 

写真 石川県輪島市門前町黒島町の保存地区。地震で海底が隆起し、海岸線が海側へ大きく移動した=18日午後

 

写真 黒島地区の黒島漁港。地震による隆起で、一帯の海底があらわになった=14日

 

写真 地震で海底が隆起し、使用不能になった黒島漁港=18日午後