JAXA探査機、日本初の月面着陸-太陽電池機能せず電力切れも(24年1月20日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)

 

記事(稲島剛史、高橋ニコラス、Bruce Einhorn)

 

(1)要点

  •     探査機の月面着陸、旧ソ連、米国、中国、インドに続く5カ国目
  •     搭載した太陽電池が電力を発生せず、数時間で電力切れる恐れ

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の無人探査機が20日、日本として初めて月面に着陸した。ただ、探査機の発電に問題が発生し、活動は短時間に限定される可能性がある。

  

(2)「20分かけて着陸 太陽電池は失敗か」

JAXAによると、小型月着陸実証機(SLIM)は日本時間20日午前0時ごろに着陸降下を開始し、同20分ごろ月に着陸した。

着陸後の探査機との交信は確立できているが、搭載した太陽電池が発電しておらず、数時間で電力が尽きる可能性があるという。

 

(3)月面への無人探査機の着陸成功は、旧ソ連、米国、中国、インドに続く5カ国目。

昨年9月に鹿児島県の種子島宇宙センターから国産の「H2A」ロケットで打ち上げられたSLIMは、狙った場所へのピンポイント着陸などを実証する計画となっている。

 1)22年11月 JAXAがに超小型探査機の通信が確立できず月面着陸の計画を断念。

 2)昨年4月 宇宙開発スタートアップのispace(アイスペース)の試みも失敗。

今回の成功でこれらの失敗を挽回できた格好となる。

 

(4)「着陸後も正常にデータを送信できてるのはソフトランディング成功の証左」

(JAXA宇宙科学研究所の国中均所長)

記者会見で、降下がうまくいってなければ高速で月に激突し、「探査機の機能は全て失われてしまう」と指摘。

「着陸後も正常に今もなおデータが地球に送り届けられているということは、われわれが当初目的としていたソフトランディング(軟着陸)に成功したことの証左だ」と述べた。

  

(5)「ピンポイント着陸の成否については1カ月程度の分析が必要」

(国中所長)

ピンポイント着陸の成否については1カ月程度の分析が必要だとした上で、探査機が予定通りの軌道を描いていたことから「個人的にはピンポイントランディング技術が実証できたと考えている」と述べ、今後の宇宙開発に向け「大変大きな一歩」だとした。

  

(6)「探査機の電力が尽きるまで月面からのデータ取得を優先」

JAXAは探査機の電力が尽きるまで月面からのデータ取得を優先して行っていく考えだ。

探査機の太陽光パネルが想定と違う方向を向いている可能性があり、今後時間の経過と共に太陽光の当たり方が変わって発電する可能性もあると国中氏は説明した。

  

(7)「小型月面探査ローバと変形型月面ロボットは降下中に正常に分離」

探査機が搭載していた小型月面探査ローバ「LEV-1」と変形型月面ロボット「LEV-2」は月に向かって降下途中にホバリングしている際に正常に分離できたという。

  

(8)「着陸精度と大幅な軽量化」

(三菱電機)

同社がSLIMのシステム開発と製造を担当した。

これまでの海外の探査機に比べ、着陸地点の精度を数キロメートルから100メートルオーダーに向上するとともに、大幅な軽量化を図っていることを特徴としているという。

 

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