介護、オンライン面談を来年度解禁 IT活用で人手不足補う 厚労省、利用者・医師の同意で(24年1月18日 日本経済新聞電子版)

 

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写真 在宅介護の中核を担うケアマネの人材不足が深刻化している

 

(1)「ケアマネジャー(介護支援専門員)と利用者の面談をオンライン化」

介護現場の人手不足を和らげるため、厚生労働省はICT(情報通信技術)を活用した業務の規制緩和に乗り出す。

ケアマネジャー(介護支援専門員)とサービス利用者の面談をオンライン化し、業務責任者が複数の施設を掛け持ちできるようにする。職員負担を軽減し、人材確保も狙う。

 

(2)「ケアマネ 在宅介護支援の事業所にも」

「介護認定を受けても、うちもケアマネが手いっぱいで、2カ月くらい新規の受け入れを断っていた」。東京都江戸川区に拠点がある在宅介護支援の事業所の責任者は現状を語る。

「ケアマネ」

介護保険の サービス内容を決めるケアプランを作成する。在宅介護の中核を担う。 

 要介護者をケアマネにつなぐ地方自治体の地域包括支援センターでは全国的に、数十カ所の事業所に連絡しても受け入れを断られるほど人材不足が深刻化している。

 

(3)

厚労省は2024年度の介護報酬改定で複数の規制緩和策を導入する。ケアマネの面談オンライン化は、少なくとも月1回は介護サービス利用者と対面で面談する必要がある現行制度を改める。同省の調査で3割以上のケアマネが利用者宅への訪問を負担に感じると回答しており、業務の効率化をめざす。

「オンライン面談」

 介護サービス利用者や主治医らの同意などを条件とし、活用する場合でも2カ月に1回は利用者宅への訪問を求める。

 

(4)介護職員の処遇改善

 厚労省はケアマネ1人が基本報酬で対応できるケア件数を、ICTの活用などを条件に現状の最大44件から49件に増やし、報酬の増加を見込めるようにする。

 

 

 

(5)高齢化の進展に伴い、必要な介護職員数は膨らむ。政府の推計では25年度に243万人、65歳以上人口がピークに近づく40年度に280万人と足元からおよそ3割増える。職員不足は25年度に28万人、40年度に65万人と推計される。

 

(6)「有料老人ホームなど」

 「職員配置基準」

 利用者3人につき1人以上配置しなければならない現状を、見守り機器を導入するなどした場合、0.9人以上に引き下げる。職員10人で利用者30人に対応できていたのが、33人に増える。

 「管理者」

介護事業所の業務責任を負う管理者が複数の事業所を兼務できるようにもする。

 「介護業務のテレワーク」

自宅などで可能な介護業務に関してテレワークでの遠隔作業を認める。ケアマネによるケアプラン作成や栄養士が手がける食事の献立づくりといった業務が念頭にある。

 

(7)「外国人も最初から常勤採用」

現行制度は海外からの技能実習生と介護福祉士候補の外国人材は、6カ月以上勤務しないと常勤職員になれない。

24年度からは日本人職員と同じように常勤として最初から採用できるようにする。介護職員の配置基準を満たしやすくなる。

 

(8)「介護職員の報酬引き上げ」

厚労省が月額6000円相当の賃上げを23年度の補正予算で確保した。

24年度の介護報酬改定でも全体で1.59%のプラス改定とし、同年度は2.5%のベースアップにつなげる。

 

(9)高齢者福祉に詳しい東洋大の高野龍昭教授は「訪問介護の人材不足がとくに著しい。地域の高齢者が介護サービスを受けられるよう、就労環境や処遇の改善がさらに求められる」と指摘する。