「無縁墓」全国的に増加、行政は対応に苦慮「親族探すだけで1年」「墓石の撤去に20万円かかる」(24年1月15日 読売新聞オンライン無料版)

 

記事

 

(1)要点

 管理する親族らがいなくなった「無縁墓」が全国的に問題になる中、栃木県内でも公営墓地のある18市町のうち、少なくとも7市町で無縁墓が確認されていることが、読売新聞の取材で分かった。

無縁墓は墓地が荒れる要因になるほか、承継者を探す手間がかかり、墓石の撤去などで公費負担も発生するため、各市町は対応に苦慮している。(井上暢)

 

清掃、除草されず

 

(2)「墓地の使用者を探しています」。那須塩原市の市営赤田霊園の一画では、墓石の前にこんな看板が立っている。周囲には高さ60センチほどの雑草が生い茂り、ポリ袋のゴミが落ちていた。

 

写真 使用者が所在不明となり、荒れつつある墓。使用者を探す看板が立つ(昨年11月、那須塩原市の赤田霊園で)=画像の一部を修整しています

 

(3)市環境課によると、この墓は管理する人が亡くなるか音信不通になり、使用料が滞納されたまま、引き継ぐ縁故者も見つかっていない。

こうした無縁墓は年々増え、現在は霊園全917区画のうち100区画近くに上るといい、同課の担当者は「清掃や除草がされないので周囲の墓にも迷惑がかかる」と頭を抱える。

 

(4)少子高齢化や核家族化が進む近年、無縁墓の増加は社会問題になりつつある。墓地が荒廃し、不法投棄の温床になる恐れがあるうえに、劣化した墓石が災害時に倒れる危険性もある。

総務省は昨年、初の実態調査の結果を公表。2020年度末時点で公営墓地がある全国765市町村のうち、約6割で無縁墓が確認されていた。

 

「手を付けられない」

 

(5)読売新聞の取材では、

那須塩原市以外にも

 大田原市で3区画、

 那珂川町で1区画、

 栃木市で複数区画あることが判明。

 佐野市でも過去に存在したという。

 宇都宮、日光市は「数は不明だが存在する」、

 鹿沼、矢板市は「無縁墓と認定していないが、使用者不明や承継拒否の墓はある」などと、それぞれ回答した。

 

(6)無縁墓は、管理料滞納をきっかけに使用者の状況を調べ、縁故者を探して承継の意思確認をするなど、自治体にとって膨大な追跡・確認作業が必要となる。

日光市の担当者は「親族を探すだけで1年かかる場合もある」と嘆く。

 

(7)無縁墓を解消する手続き

 合葬墓などに遺骨を移し、墓石を撤去する手続きが必要となる。

「墓地埋葬法」

  墓石の取り扱いに関する規定がない。

各市町の担当者は「整理したいが墓石の撤去に20万円ほどかかる」(栃木市)、「墓石の扱いが未定で、手を付けられない」(大田原市)、「墓が承継されない事態を想定しておらず、改葬には条例改正が必要」(那珂川町)などと頭を悩ませる。

 

(8)こうした中、佐野市や塩谷町は承継先をたどりやすくするため、使用者が市町外に居住する場合、代理人や保証人として市町民1人を指定させ、氏名や住所を把握するようにしている。

 また、宇都宮市は市墓園条例を改正して無縁墓への対応を規定。親族が承継を拒否した場合、墓石に1年間公告した後で改葬し、墓石も石材業者に依頼して撤去している。市生活安心課の福田衛課長は「国は墓石の取り扱いの根拠を示すなど、社会の変化を踏まえて墓地行政の改善を進めてほしい」と訴えた。

 

■横浜市墓地および納骨堂に関する条例

(使用権の消滅)

第12条 墳墓地に係る使用権は、使用者が死亡し、又は使用者の所在が不明となった後10年を経過し、かつ、承継者がいないときは、消滅する。

(使用許可の取消し)

第13条 市長は、使用者が次のいずれかに該当するときは、墓地又は納骨堂の使用許可を取り消すことができる。

(1) 第4条第3項各号のいずれかに該当するに至ったとき。

(2) 許可を受けた目的以外に使用したとき。

(3) 使用料を納付しないとき。

(4) 久保山墓地、三ツ沢墓地若しくは日野公園墓地の墳墓地、芝生型納骨施設又は自動搬送式納骨施設の使用者が、管理料を5年間納付しないとき。

(5) 墳墓地、壁面式納骨施設又は家族納骨壇の使用者が、使用許可を受けた日から1年以内に埋葬又は焼骨の埋蔵若しくは収蔵を行わないとき。ただし、墓碑又はこれに類するものを設けたときは、この限りでない。

(6) 焼骨短期保管施設の使用者が、使用許可を受けた日から6箇月以内に焼骨の収蔵を行わないとき。

(7) 法又はこの条例若しくはこの条例に基づく規則若しくは命令に違反したとき。

(8) この条例に基づく許可の条件に違反したとき。

(平13条例54・平17条例102・平19条例52・平28条例69・一部改正)

(使用場所の返還)

第14条 使用者は、墓地又は納骨堂を使用する必要がなくなったとき、使用権が消滅したとき、使用許可を取り消されたとき、又は使用許可期間が満了したときは、直ちにその使用場所を原状に回復し、市長に返還しなければならない。ただし、市長が特に必要があると認めた場合は、原状に回復することを要しない。

 

■全日本墓地協会

ホームページに

使用権の取消

原状回復義務

使用権の消滅

の例文があり、脚注もある。