コールセンターの顧客対応、生成AIで5割短く 13社調査(24年1月14日 日本経済新聞電子版)

 

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顧客の問い合わせに対応するコールセンター業界

生成AI(人工知能)の導入が急速に進んでいる。大手13社中12社がオペレーターの支援や通話内容の要約などに活用し、平均5割の業務時間削減効果を見込んでいることがわかった。人手不足の解消につなげ、データ分析など付加価値の高い事業領域へのシフトを狙っている。

 

生成AIは自然な対話や文章要約を得意とする。

コールセンターにおける顧客対応は特に導入効果が高い業務の一つとされる。

日本経済新聞は2023年12月中旬に国内のコールセンター大手15社に生成AIに関するアンケートを実施し、13社から回答を得た。

13社のうち、顧客対応に関わる業務に生成AIを利用していると答えた企業は12社だった。

5社が複数の業務に、2社は特定の一部業務で活用していた。残る5社は本格導入に向けて実証事業中とした。

具体的な用途(複数回答可)では、回答した11社全てが電話応対中に必要な情報を示すなど「オペレーター支援」に利用していると答えた。

通話内容の書き起こしや要約といった「後処理」の業務でも11社が生成AIを活用していた。

 

顧客対応そのものを人間のオペレーターから生成AIに切り替える動きも広がっている。

7社が文章で自動回答する「チャットボット」の精度向上に生成AIを活用し、3社が「ボイスボット(AI音声による自動回答)」の実用化を進めている。

 

生成AIの効果は大きい。該当業務にかかる時間について、

「1~3割」減らせるが5社、

「5~7割」も3社だった。

回答にはばらつきがあったものの、平均すると5割弱の業務時間の削減効果を見込んでいた。

 

KDDI傘下のアルティウスリンク

 11月に対話型AI「チャットGPT」などを使い音声通話終了後の書き起こしや要約を自動化したアルティウスリンク(東京・新宿)は、対象となる業務時間を47%減らした。従業員の負荷が軽くなっただけでなく、記録の質も高まったという。

 

NECフィールディング

 電話による自動応答システムに、23年度中に生成AIの機能を組み込む。従来は消費者が自動音声に従って該当する番号を入力し、問い合わせ窓口を選ぶ仕組みだった。

生成AIの導入後は口頭で用件を説明すれば最適な窓口に自動で案内されるようになる。

 

日本コールセンター協会

 通信販売や流通、金融・保険など幅広い業種で顧客対応業務をコールセンター運営企業にまるごと委託するケースが増えている。業界団体の日本コールセンター協会(東京・千代田)によると比較可能な会員企業27社の22年度の売上高の合計は1兆2545億円となり、21年度に比べ8%増加した。

 

パソナグループ子会社のビーウィズ

 顧客企業のコスト削減要請に応えるには一段の省人化が求められる。パソナグループ子会社のビーウィズは「業界内では人手不足が懸念されている」といい、人手がかかる電話による問い合わせを減らす取り組みが不可欠だと話す。

 

調査では生成AI活用に伴い期待できること

9社が「人員配置の見直し」を挙げた。顧客対応にかかる時間が減れば、サービス開発や新規事業に人員を振り向けやすくなる。

6社が、独自サービスとして生成AI機能の外部販売をめざすと答えた。

 

アルティウスリンクでは生成AIを使って顧客との会話のデータを蓄積し、マーケティングや営業支援業務に活用する方針だ。顧客対応業務に加えてデータ分析まで請け負うことで「事業領域を拡大させたい」としている。

 

 

国内のAI開発企業も顧客対応業務の省人化に注目している。

スタートアップではパークシャテクノロジーやZEALS(東京・目黒)が高機能なチャットボット開発に力を入れ、NTTも24年に始める生成AIサービスで、顧客との会話の書き起こしや要約にかかる時間を減らせることをアピールする。

 

生成AIが産業に与える影響の調査報告書を公開したみずほ銀行の片岡千鶴氏は「コールセンターのような知識・労働集約型の業務は生成AIの活用が有効な分野の一つだ」と話す。

省人化に加えて、「利用者に応じて自動的に対応を変えるなどサービスの高度化も進むだろう」とみている。

(伴正春、水口二季、橋本真実)

▼回答企業 アルティウスリンク、NECフィールディング、NTTネクシア、NTTマーケティングアクトProCX、ギグワークス、キューアンドエー、TMJ、トランスコスモス、ビーウィズ、日立システムズ、富士通コミュニケーションサービス、プレステージ・インターナショナル、ベルシステム24ホールディングス(五十音順)

 

<私見:

今の子どもたちは「生成AI社会」で育っていくといっても過言ではない。「生成AI社会」は人間活動や暮らしが生成AIに添って変わっていく社会だと思う。現在の価値観や好みではメリットやデメリットが判断できなくなる。ちょうど「車社会」になったら道路を作るために住民が立ち退かされたり、新しい仕事ができたり古い仕事がなくなったりしても、個々人だけでメリットデメリットを判断できなくなったのと同じ。

どうか生成AIの成長発展に負けないようにがんばって、上手に活用して下さい>