台湾総統選、与党の頼清徳氏が当選-民進党3期目入りで中国には打撃(24年1月14日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)
要点
(1)要点
- 頼氏の得票率は40.1%-ここ数十年で最も厳しい総裁選を制した
- 中国と距離を置きたいという有権者の考え、内政巡る懸念より強い
(3)「台湾はこれからも世界の民主主義国家と肩を並べて歩んでいく」(頼氏勝利演説)
(8)「中国共産党は中台対話の前提条件は「一つの中国」で合意すること」
(9)「有権者は内政不満よりも中国と距離を置き対米関係を重視して頼氏を支持した」
(11)「重要なパートナーで大切な友人だ。非政府間の実務関係として維持していく」(日本の外務相)
記事(Samson Ellis、Philip Glamann)
(1)要点
- 頼氏の得票率は40.1%-ここ数十年で最も厳しい総裁選を制した
- 中国と距離を置きたいという有権者の考え、内政巡る懸念より強い
13日投開票の台湾総統選で、民主進歩党(民進党)の頼清徳副総統が当選を決め、民進党が3期連続で政権を担うことになった。
米国との関係を重視する頼氏を戦争を扇動していると批判してきた中国には打撃となる。
(2)頼氏の得票率は40.1%。ここ数十年で最も厳しい総裁選を制した。
最大野党の国民党から出馬した侯友宜候補は2位、
初めて総統選に挑んだ台湾民衆党の柯文哲候補が最下位となった。
(3)「台湾はこれからも世界の民主主義国家と肩を並べて歩んでいく」(頼氏勝利演説)
頼氏は勝利演説で、「台湾はこれからも世界の民主主義国家と肩を並べて歩んでいく」と述べ、米国との緊密な関係を堅持することを示唆。台湾海峡の平和を維持するとも表明した。
「副総統候補の蕭美琴氏」
退任する蔡英文総統を台北駐米経済文化代表処代表(駐米大使に相当)として支え、副総統候補として選挙戦を戦った蕭美琴氏も頼氏と共に登壇。
(4)世界中が今回の総統選に注目する中、頼氏のスピーチは英語で同時放送され、海外に伝えられた。
写真 頼清徳氏と蕭美琴氏(台北、1月13日)Photographer: An Rong Xu/Bloomberg
(5)「米国と中国との微妙な関係のバランスを取る困難な仕事が待ち受けている」
1990年代半ばに中台間の軍事的緊張が高まった後に政界入りした64歳の元腎臓医は、米国と中国との微妙な関係のバランスを取る責任を負う。
中国の習近平国家主席は頼氏を「トラブルメーカー」「分離主義者」などと批判してきた。中国は台湾を領土の一部と見なしており、習氏は新年のメッセージで台湾との「祖国統一は歴史的必然」だと述べていた。
バイデン米大統領は中国が台湾侵略を図ろうとすれば、台湾を守ると表明している。
(6)「バイデン、習両氏」
昨年11月、米カリフォルニア州で会談。安定化の兆しが最近見えてきた米中関係だが、今回の頼氏勝利であらためて試されることになる。米中間の緊張が再び高まれば、台湾海峡に関する一つの判断ミスが紛争に発展するリスクも大きくなる。
5月に総統就任
(7)「米国が超党派の代表団を台湾に派遣する方針」
(英紙フィナンシャル・タイムズ(FT))
関係者の話として、バイデン政権が総統選後、元高官らから成る超党派の代表団を台湾に派遣する方針だと報道。
各国が台湾と公式交流を行うことに反対している中国が、米国の動きに反発するのは必至だ。
(8)「中国共産党は中台対話の前提条件は「一つの中国」で合意すること」
頼氏は中国と協力する意向も示唆したが、民進党政権の過去8年にわたり中断していた中国との協議を再開できる可能性は低い。
中国共産党はこうした中台対話の前提条件として、「一つの中国」で合意することを台湾側に要求しているが、民進党には受け入れられない条件だ。
リンク
- 台湾有事なら推計コスト1440兆円、世界経済に重大リスク-13日総統選
- 中国の侵略、阻止できるのか-台湾防衛巡り官民が抱える大きな課題
- 中国との戦争の脅威、台湾総統選の争点に-頼清徳氏は平和を守れるか
(9)「有権者は内政不満よりも中国と距離を置き対米関係を重視して頼氏を支持した」
これは、中国と距離を置きたいという考えが、不動産価格高騰や賃金伸び悩みといった内政に対する不満の高まりを上回ったことを浮き彫りにしている。
(台湾の安全保障担当者)
総統選直後に中国が台湾周辺で大規模な軍事演習を行うとは想定していないと説明。
ただ、頼氏が5月に総統に就任する前に中国が別のやり方で圧力を強めてくるとみている。
(10)国民党の侯氏
同日夜、頼氏の勝利をたたえるとともに、有権者を失望させたと謝罪。侯氏は当選すれば中国との対話を再開させる方針を示していた。
(11)「重要なパートナーで大切な友人だ。非政府間の実務関係として維持していく」(日本の外務相)
13日夜、台湾総統選の結果について外相談話を発表。民主的な選挙の円滑な実施と頼氏の当選に祝意を表した。
(外務相談話)
台湾は日本にとって「基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人だ」と指摘。
「政府としては、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持していくとの立場を踏まえ、日台間の協力と交流のさらなる深化を図っていく考え」だと表明した。
さらに、台湾を巡る問題が対話により平和的に解決され、地域の平和と安定に寄与することを期待するとした。
原題:Taiwan Elects Leader China Calls ‘Troublemaker’ in Blow for Xi、Taiwan’s Next President Is Former Kidney Doctor Beijing Despises(抜粋)