ヘイリー氏台頭にトランプ氏警戒 共和指名争い(24年1月12日 日本経済新聞電子版)

 

記事【ワシントン=坂口幸裕】

 

(1)要点

米共和党のトランプ前大統領が11月の大統領選で党候補者指名を争うニッキー・ヘイリー元国連大使への警戒を強めている。支持率が上向くヘイリー氏が一部の州で前大統領に迫っているためだ。

 

写真 10日、米アイオワ州で、討論会に参加したヘイリー氏=AP

 

(2)共和の党候補指名を争う初戦となる中西部アイオワ州の党員集会が5日後に迫った10日、前大統領は保守系米フォックスニュースが同州で主催したタウンホールに出席。

ヘイリー氏とフロリダ州のロン・デサンティス知事が参加した他候補の討論会には出なかった。

前大統領は司会者から、候補者選びの2戦目となる東部ニューハンプシャー州で一部米メディアの調査でヘイリー氏との差が1桁台になっている現状を問われ「別に心配していない。勝つと思う」と受け流した。

 

(3)「ヘイリー氏はトランプ前政権時代に債務急増を批判 コロナ対策費」

ヘイリー氏はトランプ前政権時代に債務が8兆ドル(約1160兆円)増え「(借金を背負わされた)子どもたちはそのことを決して許さないだろう」と指弾してきた。

これに対し前大統領は10日、新型コロナウイルスの感染拡大を挙げ「資金を注入しなければ見たこともないような恐慌に陥っていただろう」と釈明した。

 

(4)前大統領は2022年11月に出馬表明後、ヘイリー氏を「bird brain(間抜け)」などと批判する場面もあった。

前大統領が指名を獲得すればヘイリー氏を副大統領候補に起用するとの観測は消えない。

(米リアル・クリア・ポリティクス(RCP)の集計)

 世論調査の平均支持率は

  前大統領が62.1%。

  ヘイリー元国連大使は11.4%、

  デサンティス氏は11%で、

2位3位は前大統領と50ポイント以上差がある。

 

(5)足元でヘイリー氏が支持率がデサンティス氏をしのぐ勢いをみせると、前大統領は徐々に批判へとかじを切った。

年明けには「(前政権が建設を進めた)国境の壁に反対し、強力な国境政策を非難した」と指摘。政敵であるバイデン大統領を支える民主党支持者から献金を受けたとあげつらった。

 

(6)「ヘイリー氏の強みは無党派層からの支持」

(ヘイリー氏)

 強みは前大統領の弱点とされる無党派層からの支持だ。

 RCPの集計では民主の指名獲得が確実視されるバイデン氏と一騎打ちになった場合、3.3ポイントリードする。前大統領のリードは1.2ポイントだ。

 

(7)「無党派層の比率が米本土で最も高いニューハンプシャーで反トランプ票を集められるか」

(ニューハンプシャー)

試金石は無党派層の比率が米本土で最も高いニューハンプシャーの行方だ。

各候補の勢いを見定めるバロメーターと位置づけられる同州で前大統領が苦戦すれば、民主候補と戦う本選で政権を奪還できるかとの疑問符がつきかねない。

 

 

(RCP)

ニューハンプシャー州での支持率

 前大統領は43%

 ヘイリー氏は29.3%。

 クリス・クリスティー前ニュージャージー州知事 12%。

10日に、前ニュージャージー州知事は候補者指名争いから撤退を表明し、

ヘイリー氏が「反トランプ」票を糾合できれば接戦に持ち込める可能性がある。

(RCP)

デサンティス氏が重点的に選挙戦を展開してきたアイオワでもヘイリー氏が支持率を逆転した。

デサンティス氏にとりアイオワは正念場だ。

 

■ニッキー・ヘイリー ウィキペディア

 

ニムラータ・ニッキー・ヘイリー(旧姓:Randhawa〈ランダワ〉、1972年1月20日 - 、インドのパンジャーブ系アメリカ人)。サウスカロライナ州下院議員、第116代サウスカロライナ州知事、第29代アメリカ合衆国国際連合大使を歴任した。

 

「中絶に強く反対する保守強硬派」

2010年中間選挙でサウスカロライナ州知事選挙に共和党指名候補として立候補。同年11月の本選挙で当選を果たした。

サウスカロライナ州史上初の女性州知事・人種マイノリティ出身の州知事である。また任期中は全米50州で最年少の州知事でもあった。

信仰する宗教はメソジストの中でも保守派で、サウスカロライナ州兵の夫であるマイケルとの間に2人の子供がいる。

中絶に強く反対する保守強硬派として知られている。

 

経歴

1996年にサウスカロライナ州の州兵であるマイケル・ヘイリーと結婚する。夫の姓を名乗ると同時に、シク教からメソジストに改宗を果たしている。

サウスカロライナ州知事

2009年5月には2010年に実施されるサウスカロライナ州知事選挙への出馬を表明。当初は泡沫候補と目されていたが、2010年に入り、アラスカ州のサラ・ペイリン前州知事[2]やマサチューセッツ州のミット・ロムニー前州知事らがヘイリー支持を表明すると支持が急追し、同年5月には共和党内で支持率トップに躍り出た。

不倫相手を名乗る2人の男性が登場するなど不倫疑惑が持ち上がってメディアを騒がせたが、ティーパーティーや保守派の支持は揺らがず、6月22日、最終的には決選投票で共和党の指名を獲得した。

共和党の指名後は終始優位に選挙戦を展開し、サウスカロライナ州知事に当選した。

2013年4月には2014年に実施される州知事選挙に再選を期して出馬することを表明。共和党内での予備選挙を勝ち抜いた後、11月4日の本選挙で再選された。

2015年6月17日に発生したチャールストン教会銃乱射事件の実行犯が犯行当時に車のナンバープレートに南部連合の旗をつけていたことから、州議会議事堂に掲げられていた南部連合旗を撤去する決定を行う。これには全米からの支持が寄せられた。

2016年アメリカ合衆国大統領選挙ではテッド・クルーズを支持したが、トランプ次期大統領により国際連合大使に指名された。ヘイリーの後任知事となるヘンリー・マクマスター(英語版)副知事はトランプ支持者であり、知事昇格により国政への挑戦権を得たとも指摘される[6]。