生成AI、暮らし進化競う 米見本市CES ソニー・ホンダ、EVに搭載 パナソニックは動画提案TV(24年1月10日 日本経済新聞電子版)

 

記事の概要

(1)「人工知能(AI)を軸とした事前発表 CES」

(2)「プレステ5」のコントローラーで車を遠隔で運転する

(3)「生成AIブームが世界の大手企業の製品開発競争の土俵を大きく変えた」

(4)「利用者の好みに応じた提案や家庭ごとの省エネルギー化」

(5)「生成AIによる要約や資料の自動作成できる「コパイロット」搭載のAIパソコン」

(6)「車や家電などとAIが融合すると生活が「AI主導の生活」に変わる可能性がある」

(7)「パソコン搭載の半導体にAIの処理を担わせる」

(8)「米巨大ITは半導体や端末、スパコン、クラウドを自ら開発しハードとソフトを一貫開発」

(9)「米巨大テックがAI搭載の家電や車各社と提携しクラウド事業利用企業を増やせる」

(10)「合従連衡はじまる」

 

 

 

写真 ソニー・ホンダの川西社長は「プレイステーション5」のコントローラーでEVを遠隔で運転する様子を披露した

 

記事【ラスベガス=渡辺直樹、為広剛】

 

(1)「人工知能(AI)を軸とした事前発表 CES」

世界最大の技術の見本市「CES」の一般公開を前に人工知能(AI)を軸とした発表が8日相次いだ。

ソニーグループとホンダが折半出資する電気自動車(EV)会社+米マイクロソフト、

パナソニックホールディングス(HD)+テレビ開発で米アマゾン・ドット・コム。

家電や車各社がAIを使う製品・サービス投入を急ぐ中、AIの中核技術は米巨大IT頼みの構図も浮き彫りになっている。

 

(2)「プレステ5」のコントローラーで車を遠隔で運転する

各社の新製品発表はAI機能のアピール合戦となった

 

 1)ソニーグループとホンダのEV会社ソニー・ホンダモビリティ+マイクロソフト

 開発中のEV「AFEELA(アフィーラ)」にマイクロソフトのクラウドを通じ生成AI「Chat(チャット)GPT」を使える機能を組み込む。

ソニー・ホンダの川西泉社長はゲーム機「プレイステーション5」のコントローラーで車を遠隔で運転する様子も実験的に披露し、「ソフトが新たな機能や価値を提供できることを示した」と話した。

 

 2)独フォルクスワーゲン(VW)も市販車にチャットGPTを使って音声認識で車の操作や行き先を自動検索できるようにすると発表した。

 

●表 AIを軸にテック企業との提携が相次ぐ

     組み合わせ          協業内容

家電  

  パナソニックHD+アマゾン  AIがコンテンツを提案するテレ

                 ビ開発 

  サムスン+テスラ       EVと家電連携、AIで節電も

  LG+グーグル        テレビでネット配信を視聴

                 しやすく

自動車

  ソニー・ホンダ+マイクロソフト 生成AIの対話型サービス

  フォルクスワーゲン+セレンス チャットGPTを市販車に搭載

 

 

 

(3)「生成AIブームが世界の大手企業の製品開発競争の土俵を大きく変えた」

(独スタティスタ)

 生成AIの関連市場

  2023年の448億ドル(約6兆4000億円)規模で、

  30年には2000億ドル(約29兆円)規模に拡大する見込み。

  車以外にもスマートフォンやパソコン、テレビといった幅広い分野で顧客の争奪戦が始まっている。

 

 

(4)「利用者の好みに応じた提案や家庭ごとの省エネルギー化」

(パナソニックHD+アマゾン)

 ネットに接続して楽しめるスマートテレビを開発する。

 利用者の好みに応じコンテンツを提案する。

(韓国サムスン電子+米テスラ)

 AIなどを使いスマートハウスの省エネルギー化を進めると発表した。

 

(5)「生成AIによる要約や資料の自動作成できる「コパイロット」搭載のAIパソコン」

米デルや米HP、中国レノボ

 マイクロソフトの基本ソフト「ウィンドウズ」で、生成AIによる要約や資料の自動作成などができる「コパイロット」を載せる。

「AIパソコン」と称した製品を近く一斉に発売する見通しだ。

 

(6)「車や家電などとAIが融合すると生活が「AI主導の生活」に変わる可能性がある」

 車の運転はAIが代行し、車は人がコンテンツを視聴する娯楽空間やAIと会話する移動型オフィスとなる。

 家電も将来はAIが提案する操作やコンテンツなどを選ぶだけになる可能性がある。

 

(7)「パソコン搭載の半導体にAIの処理を担わせる」

 1)チャットGPTなどの生成AIは大量のデータを使う学習と回答が必要なため、大規模なデータセンターで処理してきた。

 AIの処理を担う半導体の性能が高まれば、これらを載せた家電やパソコン、スマホでより速い回答やスムーズな操作が可能になる。

 2)AI半導体で世界首位の米エヌビディアはパソコンに載せ、画像生成AIの処理速度を最大7割高める半導体を発表した。

 3)ライバルの米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)やスマホ半導体が強い米クアルコムも同様に端末に搭載するAI半導体の新製品を相次ぎ発表した。

米インテルもAI半導体を開発し、各社に製品を供給する。

 

(8)「米巨大ITは半導体や端末、スパコン、クラウドを自ら開発しハードとソフトを一貫開発」

グーグルやアップル、メタ、テスラといった米巨大IT企業はAIにとどまらず、半導体や端末、スーパーコンピューター、クラウドなどを自ら開発し、ハードとソフトを一貫開発し競争力を高めている。

 

(9)「米巨大テックがAI搭載の家電や車各社と提携しクラウド事業利用企業を増やせる」

AIを使った機能向上を急ぐ家電や車各社との提携が増えれば、「陰の主役」である米巨大テック企業の力が一層強まる。

提携拡大はネット経由でソフトやサービスを提供するクラウド事業の利用企業を増やし、利用料で収益性を高められる利点もある。

 

(10)「合従連衡はじまる」

生成AIを巡ってはマイクロソフトがオープンAIと資本・業務提携し、競合するAI米新興アンソロピックにアマゾンが数十億ドルを出資するなど巨額投資による技術の獲得競争が激しくなっている。

米データブリックスも米国の生成AI企業を1800億円で買収した。

 

(11)今後技術者の確保、半導体やデータセンターへの投資などを巡り、AI企業の勢力争いが激しくなる。有力なスタートアップを巡るM&A(合併・買収)による再編も広がりそうだ。日本勢も無縁ではいられない。