2人を懲戒免職陸将補を2階級降任 自衛隊員245人、ハラスメントで処分…五ノ井さん「まだ救われていない人もたくさん」(23年12月23日 読売新聞オンライン無料版)

 

記事

 

(1)(防衛省)

 22日、20万人を超える全自衛隊員を対象に実施したハラスメントに関する特別防衛監察に基づき、計245人を処分したと発表した。

2人を懲戒免職としたほか、陸自では初めてパワハラを理由に50歳代の男性陸将補を2階級降任させた。

 

(2)「パワハラ、セクハラ」

今回の特別防衛監察

 元陸上自衛官の五ノ井里奈さん(24)が実名で性被害を公表した問題などを受けて行った。昨年9~11月の調査で被害の申告を受けた計1325件のうち、1273件について事実の確認を終え、207件を処分の対象にした。

 

(3)これらの件で処分した隊員らは計245人。

  懲戒処分を受けたのは免職2人、

  降任4人、

  停職67人、

  減給34人、

  戒告22人

の計129人だった。

 ハラスメントの内訳

  パワハラ115人、

  セクハラ30人、

  パワハラとセクハラ6人。

  部下のハラスメント行為を把握しながら適切に対応しなかったなどとして規律違反で92人が処分された。

 

(4)同省は、被害の申告を受けたうち1066件は、ハラスメントの事実を確認できなかったり、被害者が調査を求めなかったりした「嫌疑不十分」と判断した。同省は残る52件について調査を続けている。

 

(5)陸海空3自衛隊では、隊員の数が最も多い陸自で最多166人の処分者が出た。

(陸将補から2階級降任の処分を受けた)

 第9師団(青森市)の副師団長だった坂元秀明2佐。

 2020年3月頃~22年12月頃、当時の所属部隊で5人の部下に、「階級章を外せ」などの暴言を吐くなどのパワハラ行為をした。

 5人は精神疾患を発症して休職。いずれも今は復職しているが、9か月休んだ被害者もいたという。

 

(6)(坂元2佐の説明)

 「部隊や隊員の能力を向上させたかった」と説明したという。

 陸自隊員が2階級降任となったのは初めてで、ハラスメントを理由にした降任も初となる。

 陸自トップの森下泰臣・陸上幕僚長は22日、「部下の手本となるべき立場の幹部が今般のような行為を行ったことは大変遺憾。ハラスメントを一切許容しない組織風土を根付かせるよう、一つ一つの取り組みを丁寧に継続して徹底していく」とコメントした。

 

(7)海自でも、パワハラを理由に50歳代の男性海将補が減給2か月(6分の1)の懲戒処分となった。

 木原防衛相は今月12日の記者会見で、「来年1月をハラスメント防止月間として防止教育を集中的に行うこととした」と述べた。具体策は近く公表するという。

 

五ノ井さん「意義あった」

 

(8)先輩隊員らに受けた性被害を告発した五ノ井里奈さん

 「特別防衛監察の実施で、これまで被害の声を上げられなかった人への対応が行われたことは意義があった」と話した。

 一方で「まだ対応されず、救われていない人もたくさんいると思う」とし、「自衛隊がどこまで変われるかは、これからの取り組み次第で、意識を変えようとしていることをきちんと示してほしい」と訴えた。

 

  ◆特別防衛監察 =重大な不正や倫理違反が疑われる事案を対象に、防衛相の指示で防衛監察本部が行う調査。過去には南スーダンでの国連平和維持活動の報告書が隠蔽(いんぺい)された問題などで実施された。

 

  同志社大の太田肇教授(組織論)の話 

「自衛隊では上意下達で乱暴な言動も見逃されてしまう独特な常識が残っている。緊張感が高い活動を行う組織であり、厳しく指導することが必要な場面もあるが、業務上必要な範囲を超えてはいけない。コンプライアンスの担当者に強い権限を持たせるなど、下からも意見を言える組織に変えなければならない」