(2019年の今日のブログ)やさしい経済学 キャッシュレス社会を展望する(9)ブランド乱立への懸念 成城大学教授 中田真佐男(12月3日日本経済新聞電子版)
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(1)コード決済に参入したプラットフォーム系の事業者のなかには、決済とあわせて「P2P送金」サービスを提供しているところもあります。
P2P送金はスマートフォンで相手先の電話番号やSNS(交流サイト)のIDを指定するだけで送金できる便利なサービスで、欧米や中国では既に広く普及しています。
(2)日本では決済アプリで銀行口座を登録すれば、資金決済法が求める本人確認が完了したとみなされます。
銀行口座をひも付ければチャージも容易になり、決済手段としての使い勝手もよくなります。
ただ、こうしたサービスの価値は利用者数の多寡に影響されるため、たとえサービス自体の質が高くても、使える店や送れる相手が増えなければ利便性(ネットワーク外部性)は高まりません。
各事業者が短期的な採算を度外視して大規模なポイント付与キャンペーンを展開しているのはこのためです。
(3)コード決済に関しては、かつてJデビットの普及に失敗した銀行業界も、銀行口座直結の即時払いサービスであるバンクペイの開始を発表するなど、巻き返しを図っています。
しかし、ブランド乱立は普及にとって悪影響を及ぼしかねません。
そこで、産官学が参加して2018年に設立したキャッシュレス推進協議会は、QRコードやバーコードの統一仕様(JPQR)を策定・公表するなどの取り組みを進めています。
(4)一方で、セブン&アイ・ホールディングスが始めたコード決済サービスのセブンペイでは、セキュリティー対策の甘さから多数の不正アクセス・不正使用が発覚しました。
わずか1カ月でサービス廃止に追い込まれ、コード決済全体の信頼低下に作用することも懸念されます。
(5)もう一つの論点として、早くから高速のフェリカベースのコンタクトレス決済を利用していた消費者には、コード決済が浸透しない可能性が考えられます。
なぜなら、支払い完了までに時間や手間を要するからです。
コード決済ではアプリの起動や読み取りが必要なのはもちろんですが、方式によっては消費者が金額の入力を求められます。
<私見:日本人の銀行口座には、預金がたくさん入っているから、うっかりネットの決済をやる気にはなれない。海外でネット決済が進むのは口座に預金が残っていないからではないかしら>