(2021年の今日のブログ)

大機小機 財政規律、昭和モデル脱却を(青獅子)(11月30日日本経済新聞電子版)

 

要点

(4)2)規律を財務官僚の査定能力に依存する「昭和モデル」から脱却する必要がある。

3)そのためにはデジタル化により財務省・各省の業務改革を断行し、決算を民間並みに速めることが極めて効果的だ。

 

記事

 

(1)財政政策の議論が盛んだ。

国家財政を憂う現役財務次官の異例の論文が10月発表された。

一方、総選挙に勝利した岸田文雄内閣は公約に基づき大規模な経済対策を打ち出した。

社会保障費の拡大圧力への対応は依然不可避だ。

 

(2)適切な財政政策とは何か。

重要なのはマクロ経済政策と財政規律という2つの観点を混線させないことだ。

1)マクロ経済政策。

新型コロナウイルス禍で日本経済は第2四半期に国内総生産(GDP)比3.9%(内閣府推計)の需要不足となった。

諸外国と比べ物価上昇率の弱さが際立ち、回復見込みは軟調だ。

2)金融政策は大規模緩和の中にあり一層の強化は難しい。適切な財政赤字規模を見定める必要がある。

3)日本の累積公的債務の水準が国際的・歴史的に見て極めて高いことは認識すべきだ。

他方、持続可能な国家債務水準の想定が低すぎたという認識も米国をはじめ各国当局に生まれている。

 

(3)日本はどう考えるべきか。

具体的にはコロナ禍対応で拡大した赤字を安定化させるスピード、すなわち中期財政シナリオの問題になる。

これに関し、東日本大震災の復興対策費を賄う急速な増税に対する浜田宏一氏らの批判にも留意が必要だ。

過去の政府の中長期の経済財政試算の精度についても、楽観的過ぎた点と保守的過ぎた点の両面あり、検証を要する。

今後の財政運営につき政府は国民にわかりやすく説明する必要がある。

 

(4)財政規律

1)無駄遣いをなくすことは「善」であり、誰もが賛同する。

ただし過去を顧み、道徳的な規律論がマクロ政策上の過度の緊縮を招かないよう注意も必要だ。

何よりも大事なのは財政規律を実現するメカニズムだろう。

2)規律を財務官僚の査定能力に依存する「昭和モデル」から脱却する必要がある。

3)そのためにはデジタル化により財務省・各省の業務改革を断行し、決算を民間並みに速めることが極めて効果的だ。

そうすれば前年度決算を9月の各省の概算要求に最大限活用できる。

国会議員も早期の決算審議を通じて財政規律への貢献が可能となる。

 

4)消費税率が10%となり、納税者民主主義からの監視は強まっている。

これに応える財政政策の4原則は専門的知見、決算スピード、透明性、客観性といえる。