スコットランドの選択(9月28日日本経済新聞)
新しい「国のかたち」か


(1)ヨーロッパで国の姿は、第1次世界大戦で変わった。
大戦の結果、西は現在のイタリアから東はウクライナやルーマニアまで広がる版図と多民族を持っていたハプスブルク帝国が崩壊。
「民族自決の大義」のもと、チェコスロバキア、ハンガリー、ユーゴスラビアなどが生まれた。

(2)第1次大戦後の南東欧になぞらえ、地域が小国に分裂することを「バルカン化」と呼ぶ。
この100年の世界を見れば、小さなもの、弱いものが、大きなもの、強いものの支配、圧迫から逃れようという流れははっきりしている。

(3)50年前の東京五輪に参加した国・地域は93だったのに、2年前のロンドン五輪では2倍以上の204になった。
きな臭さが伴う「バルカン化」に代わって「ナショナリズム」(民族主義、国家主義)、「マイクロナショナリズム」と言ったりもする。
それが国の独立を目指す原動力になる可能性はこれからも高い。
種子は欧州にもアジアにも、まだ世界のどこにでもある。

(4)チャーチル元英首相は、ハプスブルク帝国の崩壊によるバルカン化が地域の安全保障を不安定にし、結果としてヒトラーのドイツや社会主義のソ連を強大にさせたと指摘した。
そのことを忘れるわけにはいかないし、ハプスブルク帝国の姿にも今に生きる教訓はあるだろう。