経営学はいま(日本経済新聞)
企業財務とリスク(5)
国際展開には利点と課題 
一橋大学教授 中野誠

(1)最近10年間で、日本企業のグローバル展開はざっと2倍に拡大した。
海外展開に積極的なダイキン工業は海外売上高比率を、15年には73%に高める計画だ。
 
(2)グローバル展開には利点と課題がある。
利点は生産コスト低減、経営資源の効率活用、リスク分散などだ。
課題は組織運営コストの増大、進出先の政治不安による事業の脆弱性、国境をまたぐ経営力の不足などだ。

(3) 1999~08年の10年間について日本の製造業の海外展開の度合いと企業の業績・価値の関連を分析した。
その結果、海外展開の度合いを高めると企業の総資産利益率(ROA)が向上するほか、株価純資産倍率(PBR)などにも正の影響を与える傾向があると判明した。
 
(4)電気機器各社を例にとると、米州や欧州連合(EU)への進出は業績の押し上げ効果を伴った。
だが、アジア地域への展開は業績への影響がないか、マイナスの効果があった。