「4。。。」 | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。



鯛焼き屋の前に錬太郎は突っ立っていた。

自分に何が起きているのか理解できないまま呆然としていると、店の主人らしき人が鯛焼きを二つ錬太郎に手渡した。

「えっ、僕は何も頼んでないけど?」

受け取った鯛焼きは、紙に包まれていたが熱くて手に持っていられないほどだった。

「あちっあちっちちち」

受け取った鯛焼きを手の上で右左に転がすようにしていた。

錬太郎が戸惑っている様子をよそに、店の主人は他の接客に忙しく動き回っている。


錬太郎が声を掛ける間も無い。


すると隣にジーンズの似合う細身の女性が立っていた。


何か注文したのか、手にはまだ何も受け取っていないようすだった。

錬太郎はその女性に声を掛けた。

「あ、あのー、あちっあちっ!"!」

「えっ、私?どうかしました?」

「いや、そのー、あちっ!」


用を得ない口調で、肝心な言葉が出てこないまま鯛焼きを両掌の上で転がしていた。

「私に何か?」

「僕は鯛焼きを頼んでいないのですが、突然僕はここに立っていて、その、あの、この鯛焼きなんですが、もしよろしかったらどうぞ」


女性は錬太郎のジグソウパズルのような口調に少しあきれながらも


「えーと、かい摘んで言うと貴方はこの店の前に突然立っていて鯛焼きを手渡された。で、その鯛焼きを私にくれるというの?」


周囲にいた客はいなくなり、二人だけが店の前に取り残されていた。


太陽が高く昇り始め、道路脇の鯛焼き屋の奥にも陽が差し込み始めた。




のんびりと




店の奥には小さなテーブル一つと丸い小さな赤い椅子が二脚あった。


錬太郎は顔を少し紅潮させたまま、女性のしっかりとした言葉に関心していた。


「頂いてもいいの?」

「えっ、ええ。どうぞ」

「鯛焼きは二つあるし、せっかくだから奥の椅子に腰掛けて一緒に頂きません?」

軽く微笑ながら錬太郎に言った。

「はい。では」

特に洒落たsceneでもなく、二人は紙の包みを開け女性は器用に鯛焼きを取り出し錬太郎に手渡した。


錬太郎と女性は無言のまま鯛焼きを頬張りながら、店の外へ眼を向けていた。


車はそれほど行き来している様子も無く、人通りもまばらだった。


突然、錬太郎は鯛焼きを食べるのを止め紙の包みの上に三分の一になった鯛焼きのシッポの部分を置いた。

すると女性が


「どうしの?喉にでも詰まったの?お水なら、ほら、そこにあるわよ」


「い、いえ。そうではなくて」

「なに?」


錬太郎は、どう説明したらいいのか困っていた。


というより、この世界そのものが神様とコイデカの仕業だとすれば全てバーチャルという可能性もある。


目の前にいる女性だってバーチャルということになる。


いや、しかし、どうも現実っぽい感覚しか無いのだ。


空気も風の匂いも香りも。


この鯛焼きだって熱いし美味い。


独り言のように呟き俯いて頭を傾げる錬太郎に向って女性が言った。


「もしかして貴方、宇宙人かなにか?」


「えっ?そ、そんなはずないでしょ。れっきとした人間ですよ」


「だけど、さっき突然店の前に立っていたって言ってたような」


「はい。それは確かです」


女性はケタケタと屈託のない笑顔で笑い始め


「それって、やっぱ宇宙人じゃん♪」


いきなりフレンドリーな言葉が飛び出して来た。


「ち、違うって言ってるでしょ。ぼ、僕はただ神様とコイデカに」


「なになに?神様?コイデカ?それって何?何?おもしろそう♪ねぇねぇ、もっと聞かせてよ」


女性は身を乗り出してきた。


鯛焼きは既に食べ終わっていた。




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この女性はどうも好奇心旺盛らしいが、この空間がどこなのかまだ把握できずに錬太郎は宙を浮いた状態のまま今に至る経過というか状況を説明し始めた。


女性は瞳を大きく開き、目をキラキラさせ錬太郎の話しに耳を傾けた。



ここは、どこ?


君は誰?


僕は鯛焼き屋で何を話しているんだ?




つづく




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