アルカナを乗せた車は、海辺から滑るように走り始めた。
"意志"という"愛"を乗せ、約束の無い明日だけに背を向け。
人間とはそういうものかもしれない。
恒太郎がが心を見せると言った場所。
ただ、一人。。。孤独を満たす旅の果てに辿りつく、それだけの場所だった。
その場所に、彼は"意志"を納めていた。
彼の心に寄り添い続けていたアルカナは、その場所を確かに知っていた。
海岸から時を抜けるように走り続け、二人の瞳には立ち並ぶ山々が流れ込んできた。
進む道は、徐々に細くなり険しさを増していった。
恒太郎が、正面を見据えたまま言った。
「もう少しだ」
既に恒太郎は、現(うつつ)を心から締め出していた。
勇気という覚悟なのだろうか、瞳に迷いは無かった。
仕事も家庭も全て麓(ふもと)に押しやるかのように、道の向こうを真っ直ぐ見据えたまま車を走らた。
自らが背を向け続けて生きてきた"意志"という"愛"だけを携えていた。
意識にすら昇らない呼吸を恒太郎は感じながら山の奥深くへと進んだ。
二人の心は凛とした空気に包まれ、時を抜けるように光を求めていた。
魂を沈めた湿原と火山群が盛り上がる隙間を走り。。。
勾配の急なうねる道を登り切り、やがて木々が道の両脇に整然と立ち並ぶ回廊に差し掛かった。
その時、恒太郎が語気を強めて言った。
「衛兵が立ち並んでいる」
アルカナは小さく頷いた。
衛兵が立ち並ぶ緩やかな直線を抜け、やがて二人の眼前に透き通る青空が広がり白く輝く山肌が波のように群れをなし現れて来た。
「やっと君の心の居場所に辿りついたね」
アルカナは恒太郎の左手をそっと握り言った。
10年男。
起草恒太郎は、今。。。青の城に辿り着こうとしていた。
もの言わず人の心を寄せ付けぬ城に。
山肌を横に見ながら道を進むと、そこに洋風の完全木造建築の荘厳な建物が凛々しく立っていた。
恒太郎は車を駐車場に止めた。
「ここで待っていて」
アルカナは頷き、車から降りて周りの景色を眺めた。
そこに春は無く、夏も無く。。。
ただ、秋と冬があった。
流離うほどに、人は孤独を呑み込み意志に背を向ける。
しかし、背を向けていたのは"意志"ではなく。。。
"意志"という"愛"。。。なのかもしれない。
つづく




