「もう。。。後戻りできない」
恒太郎は水平線の彼方を見つめるアルカナを、背中から強く抱きしめていた。
アルカナが言った。
「私には、失うものなんか何も無いって。。。言ったけど。。。」
「うん。。。」
「でもね、たった一つだけあるの」
「うん。。。」
「たった一つだけ、失いたくないものが。。。」
そう言い掛けて、アルカナは声を詰まらせた。
「私が君から離れないと。。。君を失う。。。」
アルカナは、いったい誰と何を取引をしたのか。。。
「君を。。。失いたくないの。。。」
アルカナの頬を伝う雫は、恒太郎の胸を濡らした。
恒太郎は、もう何も聞こうとはしなかった。そして、アルカナの肩を抱いたまま朝日を見つめて言った。
「この海から始めよう。始まりが終わりだとしても僕は構わない。終わりがあるというなら始まりを作ろう。二人で。。。僕が背を向け続けた"意志"は。。。いま僕の腕の中にあるんだ。"愛"という君が。僕はもう二度と背を向けないと誓った。終わりの無い始りを作ろう。二人で。。。」
アルカナに、約束の無い"永遠"という言葉が見え始めていた。
二人は寄り添ったまま、海の彼方を見つめていた。
「約束する。僕の孤独を抱き寄せ包んでくれた君を。。。僕は失わない。たとえ僕が消えても。僕は君の"意志"として寄り添い続ける。これが僕の愛。。。それでいいんだ」
二人の愛は、もはや愛よりも愛でしかなく。。。
愛ゆえに、二人は愛する意志を掴んでいた。
二人は、愛を見つめ合うように互いの瞳の奥へと溶け込み、淀みなく雫を溢れさせた。
「僕の、心を君に見せよう。。。」
やがて二人を乗せた車は、音も無く走りはじめた。
人の心を寄せ付けぬ城へ。。。
つづく

