10年男は夢と現の隙間から、自らの"意志"を"愛"に変え抱き寄せた。
目前に広がる景色は、確かに風も香りもある。
そして、アルカナの温もり。。。
現。
恒太郎の腕は、確かに"愛"を抱きしめていた。
すがる愛でもなく、寄り添う愛でもなく、そして。。。支え合う愛でもなかった。
自らの"意志"という"愛"だった。
人は自分を愛することを躊躇(ためら)う。
"欲望"という言葉から目を逸らし、"意志"に背を向け続ける。
しかし、"愛"は自分を愛さぬ限り存在しない。
それを、10年男。。。起草恒太郎は知った。
人の心の中に"愛"を探しても、"愛"は"悲しみ"という言葉にさえ聞こえ始める。しかし、自らの心の中にある"意志"に立ち戻った時、"喜び"という"愛"があることに気付く。
自らの心の中にある"意志"が"愛"そのものだということを彼は知ったのだ。
しかし、"意志"はアルカナという"愛"として、彼の心から旅立たなければならない。
アルカナが秘かに残した細い糸を彼は手繰り寄せ、二人は叶えられぬ"愛"を掴んだ。
昇り来る朝日の中で、二人は明日を見ようとしているのか。。。
時は全てを待たず流れ始めていた。
人は自らの運命と出会う時、本来の自分に戻るらしい。
恒太郎は、この運命の一つ限りの時。。。自らの"意志"に掛けていた。
彼がが言った。
「アルカナ。僕をこのまま愛し続けてくれ。。。現がダメなら。。。」
「ダメなら?」
「僕は君の"意志"になる。君が"愛"として僕の目の前にいる。君にも"意志"があるんだ。なら、僕は君の"愛"になる。"意志"という"愛"に。。。」
「それは出来ない。。。」
「いや、できる。アルカナ。。。君ならその方法を知っている。。。だろう?」
アルカナは何も答えなかった。
「僕が君の"意志"になれば君を愛し続けることができる。。。」
アルカナは無言のまま恒太郎の腕の中にいた。
「君が僕で、僕が君で在り続けられるんだ。。。」
「恒太郎。それは出来ない。君のそばにいたい。一緒に居たいんだよ。でも、君に再び会うために取引をしたの。。。」
「誰と?。。。誰とどんな取引をしたの?。。。」
「。。。」
"切り札"。。。
つづく

