22. | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。





 車のライトは、いつしか朝の冷気に薄れながら陽の光に溶け込んでいた。



 掴んだ愛を温めるように、二人の身体は寄り添っていた。




 誰も知らぬ明日を、二人は知っているかのように進む道の果てをただ見つめていた。






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 生まれたての笑顔が、互いの瞳に映りながら生きたい。


 恒太郎の意志には、淀みなく愛が溢れていた。



 

 恒太郎は掛け違えたボタンをそのままに人生を歩き続けて来た。





 いつかなんとかなる。いまだけだと自分に嘯き仕事に没頭し心をごまかし続けていた。




 それは、自分の意志に背を向けることだと。。。知っていた。






 しかし、彼は何も変えることなく、何も変わることなく笑顔の無い沈黙というルールを自らに課してきた。


 奪われたのではない。笑顔を自分で消しているだけだと。。。

 




 
 カタカナのギクシャクなら、ボタンの掛け違いも直せたかもしれない。



 しかし、自分の感情をゼロに近づけ無関心を装うほど、何気ない言葉が負の感情を呼び起こし心は萎えてい行った。



 何がそうさせたのか。



 きっと些細な歪が重なったのだろう。恒太郎も、いつか理解し合えると高をくくり、過去の自分を振り返ることすら忘れていた。




 やがて、仕事以外に心を費やす気力すら失せ、孤独だけが心を癒す生活を送り続けて来いた。




 ダッシャンという自宅マンションのドアの孤独な響きだけが。。。結婚生活の証なのかと感じていた。




 そんな彼が、今。。。




 自分の本当の意志に向き合い、恋よりも愛よりも早くアルカナを抱きしめていた。彼自身、自分でも信じられなほど素直な気持ちだった。



 



 ただ、アルカナの満たされた笑顔を抱きしめ続けていたかった。


 一つ限りの時を失いたくなかった。





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 二人を乗せた車は、夜を抜け朝日に向かい走っていた。


 

 恒太郎が言った。




「アルカナ。。。」




 正面を見据え運転する恒太郎の横顔を見つめ

 


「なに?」



 とアルカナが小さく答えた。
 








「いや。なんでもない」




「どうしたの?」





「本当に君がいるんだね。僕の傍に。。。」





「うん。いるよ。ちゃんとほら。。。」




 アルカナはそう言って恒太郎の頬を指先で軽く触れた。




「うん。アルカナが隣にいるんだね。。。」




「私。。。やっぱり。。。どこにも行けなかった。。。」








「もう、どこにも行かないでくれ。。。アルカナ」








 その恒太郎の言葉に、アルカナはすぐに返事をしなかった。







 一本の道の向こうに、海が見え始めていた。







 アルカナが。。。言った。






「うん。いいよ。ずーっと一緒にいるよ。恒太郎といつも一緒にいるもん。私。。。」






 途切れた言葉の続きを知っているかのように、恒太郎はアルカナの肩を抱き寄せた。





「いいんだ。。。大丈夫さ。。。僕がいる」





 言葉を噛みしめるように恒太郎が言った。






 車は海の見える展望台近くの駐車場に静かに滑り込んだ。







 陽は、青い空を温かく染め始めていた。









 つづく





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