17. | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。






 恒太郎の車は、ある場所へ向け直走っていた。





 言葉の無い電話だった。



 それが何を意味するのかは分らなかった。

 




 聞こえたのは、白鳥の鳴き声だった。








 


 時として、人の感性は一瞬言葉を無視するほど飛躍する。



 恒太郎は、それを感じていた。



 彼の"意志"が示す場所へと。。。




 

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 自分の心に背を向け続けてきた10年男。。。起草恒太郎。



 今、"意志"に向っていた。







 自分がいま何をしようとしているのか。そこに理由などいらなかった。



 ただ、会いたい。それだけだった。






 そこにアルカナがいるのかさえ、何一つ確かなものは無い。流れる景色は無意識の中に溶け込み"意志"だけが車を走らせていた。




 たとえアルカナに会えたとしても、彼女は恒太郎を覚えてはいない。




 それを知っている恒太郎は、彼女に話し掛ける言葉も見つからないまま、ただ走り続けた。






 彼女の心を取り戻す方法も考えもつかない。



 それでも、白鳥の泣き声だけが聞こえた携帯電話に、恒太郎は自分の"意志"を掛けた。







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 道は、未知のまま彷徨い続ける。


 笑顔すら無くした男が、戻れぬ道に印された記憶が鼓動と共に熱く身体に注ぎ始めていた。





 恒太郎は自分の"意志"に語りかけていた。



 幾度拳を握り、幾度涙を隠し、幾度生きる意味に背を向けてきたんだ。


 誰に話すことも無く、自分の意志を隠し続けて来た。これ以上何に背を向けたらいいんだ。


 この道の向こうに確かなもなんて何一つ無くたっていい。


 
 それでもいいんだ。



 何も分らなくてもいい。確かなものなんて無くてもいい。



 それでもいいんだ。



 




 道は未知のまま、空を抜けるように車は走り続けていた。










 恒太郎は、"意志"が示す場所に失えぬものがあると感じ始めていた。





 自分の"意志"を見つめ触れるのは、いましかないと。







 どれほど遠くとも、どれほど儚くとも、どれほど切なくとも、いま自分の"意志"を信じようとしていた。




 時がどれほど心を呑み込んでいても。。。



 この時。。。一つ限り。。。



 夢と現の隙間からアルカナを抱き寄せてみせる。



 恒太郎は強くそう思った。






 欠けたframeの中に一つ限りの時が、いま。。。



 巡り逢おうとしていた。







 走れ。。。




 恒太郎。。。。




 走れ。。。










 陽は、西の稜線に隠れ始め、空は深さを増していった。







 つづく








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