65.The place of opening | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。






「ここは?」



 錬太郎は、ヒマちゃんに聞くと




「”はじまりの場所”」



 。。。



「今、錬太郎には何が見える?」




「そうだな。。。氷河と海、二つの太陽と月。。。」




「そっかぁ。ふーん。。。」


「ん?何故そんなこと聞くの?ヒマちゃん。。。」


「シンデレラのお話し。。。もちろん知ってるわよね。。。」


「それは、知ってるよ。何故そんなこと今聞くの?今見えている風景と何か関係があるの?」




「シンデレラ物語をフランス人から聞いて、ミクマク・インディアンが神話的なシンデレラ物語を再生したのよ。そして、自分なりにアルゴンキン伝説集っていう神話集のようなものをを紹介したの。でも、それは私たちが彼に授けたもの。。。我々のバイブルを彼を使い現世に伝えようとしたの。。。それは遥か昔から私たちが伝えてきたことを彼は物語にし、人類の真実を伝えてい来たもの。。。語られぬように。。。そして。。。確かに伝えるために。。。」




「はぁ。。。それって。。。目に見えるとか見えないとかって言う?。。。」



「へーっ、錬太郎。。。やっぱり貴方。。。どこで、それを知ったの?」





「いや、どこでって。。。部屋にいつもあるんだ。どこで自分が手に入れたかなんて知らないけどさ。。。忘れたころに。。。いつも枕元にあるんだ。不思議だとは思ったけど、でも本は好きだからもきっとどこかの古本屋や何かで買ったのかと。。。ただ、装丁も何もないんだ。不思議だとは思っていたよ」




「そう。。。貴方は、この世界の姿をそこで学んでいたの。やはり錬太郎は彼なんだ」



「その、彼って誰なの?」



「いいの、それは後で。。。」



「ん。。。まぁ、いいや」




「その神話にどんなことが書かれてあったか覚えてる?」





 すると錬太郎は、自分の言葉とは思えないほどの速さで物語のあらましを話し始めていた。




『昔むかし、湖のほとりに大きなインディアンの村があった。この村のはずれに一軒の家があり、そこにはふつうの人の目には見えない人が住んでいた。


この人は偉大な狩人で、守護神は霊界の最高者であるヘラジカだった。

この人のお世話は、一人いる妹が全部を取り仕切っていた。そして、この人を「見る」ことができた少女は誰でも、この人と結婚できると言われていた。


そのために、たくさんの少女たちがこの人を見ようと様々に試みたが、誰一人として成功したものはいなかった。

こんなふうだった。

夕方が近くなって、狩に出ていた「見えない人」が村に戻ってくるとおぼしき時刻になると、妹は湖のほとりにやってきた少女に近づいて、いっしょに散歩をはじめるのだった。


妹には兄である「見えない人」のことが見えた。彼女にはお兄さんがいつも見えていたので、その腕を取って歩きながら、かたわらの少女にこう訊ねるのだった。

「あなたには私のお兄さんのことが見える?」


するとたいがいの少女はこう答えた。


「ええ、もちろんよ、よく見えるわ」


でもなかには「だめ、見えないわ」という子もいた。

「見えるわ」と答えた少女には、妹はさらにこう訊ねた。


「じゃ、お兄さんはどんな肩紐をつけている?」


さらにこうも聞いた。


「お兄さんのヘラジカ橇(そり)はどんな鞭を使っているのかしら?」


すると少女たちはこんなふうに答えたものだった。


「なめし皮の肩紐よ」とか「緑の柳の小枝でできた鞭よ」


とか。


すると妹はこの少女たちが本当には「見えない人」が見えていないことがわかったので、静に

「わかったわ。さぁ、私たちの子屋に戻りましょう」


と言った。

小屋に入ると、妹は少女たちに


「あそこの場所に座ってはだめ。お兄さんの座る場所だからね」


と注意した。彼女たちは夕食を準備する手伝いをした。彼女たちは興味津々だった。「見えない人」がどうやって食べるのか、知りたかったからだ。しかし、「見えない人」は戻ってきて、家の中でモカシン靴を脱ぐと、ほかの人の目にも見えるようになったので、そうなるとふつうの人と同じになった。


少女たちはなにかが起こることを待ったが、何も起こらなかった。たとえ彼女達が一晩中この人といっしょに過ごしても、何もおこらなかった。

この村に一人の妻をなくした男がいた。彼には三人の娘がいたが、一番末の妹はとても身体が小さくて、弱く、しばしば病気になっていたので、お姉さんたちは末娘のことをずいぶん酷く扱った。それでも二番目のお姉さんはまだ少し優しいところもあったので、末娘のいいつけられる仕事の手伝いをしてやったりした。ところが一番上のお姉さんは焼けた炭で末娘の手や顔を焼いたので、体中は虐めの傷跡だらけだった。


そこで村人たちは彼女のことを、つまり「ボロボロの肌の少女」とか「燃やされた肌の少女」とか呼んでいた。

父がもどってきた、末娘がひどいかっこうをしているのに気がついて、どうしたのか、と、訊ねる、すかさずいちばん上のお姉さんがこう答えた。


「なんでもないのよ。この子が悪いのよ。火のそばにいっちゃいけないと言いつけておいたのに、言いつけを守らないで火に近づくんだもんだから、火の中に落ちてしまったのよ」


さて、この二人のお姉さんたちにもとうとう順番がやってきた。いよいよ「見えない人」のところへ出かけて、自分達の運を試すべき日がやってきたのだ。お姉さんたちは精一杯めかし込んで、自分達を美しく見せようとした。末の娘がまだ家にいたので、彼女をいっしょに連れて、湖畔まで降りていった。

さてもいよいよ「見えない人」がやってきた。この人の妹の質問に答えなければならないのである。


「あの人のことが見える?」


と聞かれて


「はい、もちろん見えます」


と答えた。同じように、肩紐のことか橇(そり)の鞭のこととか質問されて


「なめし皮でできたものを手にしています」


などと、本当は見えもしないのに嘘をついて答えたので、ほかの少女たちと同じようになにごともおこらず、何も得られなかった。


翌晩、父親はたくさんの小さなきれいな貝を持って戻ってきた。この貝がらはweiopeskool(wampumとほかのインディアン語で呼ばれる貝殻の数珠)ができるので、みんなでさっそく紐を通す作業にとりかかった。

かわいそうな燃やされた肌の少女は、いつもは裸足だったが、ある日父親から古くなったモカシン靴をもらった。モカシンは彼女には大きすぎたので、湖にいって水に漬けて小さくして、自分に合う大きさにした。

そして、お姉さんたちにwampumを少しだけくださいと頼んだ。いちばん上のお姉さんは


「向こうへお行き、この嘘つきのバイ菌ちゃん」


と言って追い返したが、つぎのお姉さんは少しだけwampumを分けてくれた。


わずかなボロで身体を覆うだけだったこのかわいそうな少女は、そこで森に行って白樺の皮をはいできた。そして木の皮にちょっと形をつけて、衣服につくった。

これを着ると少女はまるでおばあさんのように見えた。それからペチコートをはき、ゆったりのガウンをはおり、帽子やハンケチを身につけ、膝まで埋まってしまうほど大きな父親からもらったモカシン靴をはいて出かけた。

自分の運命を、彼女は試そうとしていたのだ。村のはずれに連れられたwigwamがあったが、そのとき彼女の目にははっきりと「見えない人」がそこにいるのが見えたのである。


なんと幸先のよいことだろう。彼女が立っていた戸口のところからその人のいるところまで、シュルシュル、ホーホーと不思議な音を立てる気流がつながっていたのだ。お姉さんたちは末娘のこの奇妙なかっこうを見て、さんざん笑い者にして、家に留まらせようとした。

でも彼女は言うことをきかなかった。お姉さんたちはいよいよいきりたって嘲って(あざけって)みせた。とうとう大声で「いいかげんにおし」とどなってみたが、彼女はかまわず、ずんずんと目的の場所に進んでいった。まるでなにかの霊が、彼女を突き動かしているかのようだった。

ずいぶんと奇妙ないでたちをした小さな女の子は、髪の毛をちりぢりに焦がし、ちっちゃな顔を真っ赤に上気させ、篩(ふるい)に穴でもあいているかのようにどんぐり目を見開いて一点を見つめて、やってきた、なんて変なかっこう。でも、「見えない人」の妹はこんな彼女を暖かく迎え入れた。なぜならこの高貴な魂をもった女性は、ものごとを外見ではなく、その奥にひそんでいるものの価値によって知ることができたからである。


夕闇が降りると、彼女は少女を誘って、湖畔におりてきた。そして「見えない人」のやってくるのがわかるかどうかを、試してみた。


「あの人が見えますか」


と少女に聞いた。

「もちろん見えますとも。ああ、なんてすばらしい方なのでしょう」

「あの人の橇をつないでいる日もはどんな」

「虹です、虹でできています」


と答えたが、すぐに怖くなった。


「あれはね、Ketak’soowowocht(天の川)よ」


「あなたには本当に見えているようね」


と妹は言って、彼女を家に連れて行った。彼女が少女の身体をていねいに洗うと、顔や身体を覆っていた汚れがすっかり消えて、きれいになった。髪はぐんぐんと伸びて、まるで黒鳥の羽根のように長く、美しくなった。

目は星のようだった。


こんなにきれいな少女はこの世界にもいないと思えるほどだった。

妹は宝箱からいろいろな飾りを取り出して、少女を結婚の飾りで装った。髪に櫛を入れてけずると、髪はますます長くなっていった。驚くような出来事が次々と起こった。

こうしたことが済むと、妹は少女にwigwamの中の妻の座にお座りなさいと言った。

その隣に「見えない人」が座る。

そこは戸口の脇の座である。


「見えない人」がとうとう部屋に入ってきた。


彼は神々しいほどに美しかった。

そうしてこう言った


「Wajioolkoos(とうとう見つけたな)」


「Alajulaa(はい)」


と彼女は答えた。


少女はこうして「見えない人」の妻になった』。。。。




 という話を錬太郎は滔々と滑らかな口調で、何かを唱えるかのように話した。



 話し終わると、錬太郎は自分がなぜこんなに覚えているのか。。。不思議だった。




 すると、ヒマちゃんが言った。。。



 

「貴方は、やはり”Invisible man”。。。目に見えない男なのね。。。やっと会えた」





つづく